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December 24121998

 子へ贈る本が箪笥に聖夜待つ

                           大島民郎

リスマス・プレゼント。西洋のお年玉みたいなものだが、お年玉よりは渡し方に妙味がある。いつごろ、誰が発案したのだろうか。たいしたアイデアだ。このアイデアで最もよいところは、贈り主が匿名であるところだろう。両親からでもなければ、他の誰からでもない。すなわち、神様からのプレゼントということになる。そこが、お年玉のように恩着せがましくなくて素敵だ。ただし、神様からのプレゼントは遠い北国からサンタクロースが運んでくることになっているので、匿名に徹する親は大変である。聖夜にこっそりと枕元に置いておかなければならない。ために、その夜まで保管場所に苦労する。本ならばなるほど箪笥に隠すというテもあるが、大きな物の場合は本当に困惑する。いつだったか一輪車を買ってきたまではよかったが、クローゼットに押し込んではみたものの、いつ発見されるかとヒヤヒヤの仕通しだったことがある。それもこれもが、みな親心。クリスマスの日に、子供が喜ぶ顔を想像しては、作者も指折り数えて待っているのだ。このとき、父親は子供よりもむしろ聖夜を待ちかねていたにちがいない。(清水哲男)


April 0342011

 酒蔵につとめ法被の新社員

                           大島民郎

月になって初めての日曜日です。大震災の影響で、被災地にある会社では内定取り消しを考えているところもあるようです。事情は理解できないでもありませんが、就職難のこの時期に、やっと仕事が決まってホッとしていた学生にとっては、なんとも残酷な知らせです。今日の句は、めでたく会社に入った若者を詠んでいます。酒造会社に勤め始めたその初日に、用意された新しい法被を着て、現場に集合しているところでしょうか。製造過程を知らなければ、事務だって営業だって仕事にならないのだという、先輩の説明を緊張して聴いているのでしょう。晴れてはいるけれども、風はまだ冷たく感じられます。これからここで人生の大切な部分を過ごすのだと、思えば風の冷たさのせいだけではなく、胸も小刻みに震えてきます。『新日本大歳時記 春』(2000・講談社)所載。(松下育男)




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