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November 16111998

 昼めしの精進揚や冬隣

                           川上梨屋

進揚(しょうじんあげ)は、野菜の天ぷらのこと。人参、ごぼう、茄子、さといも、れんこん、南瓜……。そして、ときには三つ葉などの葉物類。魚など生臭いものは揚げないので、精進揚という。あっさりしていて、私の好みだ。深大寺(東京・調布)の山門への登り口に野草の天ぷらを出す店があって、これも精進揚である。たまに寄ってみるが、いつも美味い。ところで、句の精進揚は、昨夜のおかずの残りか何かで冷えきっていると読んだ。暖かい季節には、冷えた天ぷらもまた美味なものだが、そぞろ寒さがきざしてくる頃ともなると、その冷たさは歯にしみ、侘びしさにも通じてくる。作者の職業は、実は「鰻屋」さん。で、これから店を開ける準備にかかる前の昼飯なのだから、悠長におかずなど作ってはいられないのだ。昨夜の残り物で、適当にすませてしまうというわけである。ありあわせの精進揚での昼飯に、その冷たい侘びしさともあいまって、冬がもうすぐ近くに来ていることを、いやでも実感させられてしまう。食べ物を扱っている人は、やはり食べ物での説得が人一倍巧みである。(清水哲男)




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