January 3011998

 前略と激しく雪の降りはじむ

                           嵩 文彦

(だけ)文彦は、生まれも育ちも北海道で、現在は札幌在住の詩人。医師。この発想は、雪の多い地方の人ならではのものだろう。「雪は天からの手紙です」と言ったのは、たしかフランスの詩人だった。が、散文的な大雪はドカンと挨拶なしに「前略」で降ってくるというわけだ。それにしても「前略」とは言いえて妙。俳諧的なおかしみが生きている。自由詩では、なかなかこんな具合には書けない。伝統定型の強みだ。しかしこの魅力は、自由詩を書く人間にとっては、大いに「毒」である。最近、この「毒」にいかれた詩人がかなり増えてきた。もとより私もその一人だが、解毒剤はあるのだろうか。たぶん、安直なそれはないような気がする。もうこうなったら、「皿」までいっしょに食ってしまおうと覚悟を決めた。しからば、その先に何があるのか。それは、誰にもわからない。『実朝』(1998)所収。(清水哲男)




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