季語が鷹狩の句

December 13121997

 吹雪とは鷹の名なりし放ちけり

                           勝又一透

ジオで、鷹匠(たかじょう)と話す機会があった。鷹匠は鷹を飼育し訓練して鷹狩りをする人のことだが、その人は鷹の一種である隼(はやぶさ)を同伴してきてくれ、スタジオ入りした。鷹と一緒に放送をしたのは、生まれてはじめてである。目隠しされたソヤツは、平気で放送中に糞をした……。その人の説明によると、隼には名前をつけずに番号をつけるのだそうだ。が、大鷹には、産地にちなんだ名前をつける決まりである。だから、句の鷹「吹雪」は雪国で飼育された大鷹だと知れる。鷹という鳥は、本質的には臆病であり、人間の躾けや命令には屈服しない頑固さも持つ。鷹と人間の心の交流などということはほとんど無理であるらしい。したがって、鷹匠の仕事は鷹の本性や属性を見極め見極めして根気よく育て、鷹場の地形や気性条件や獲物となる鳥の性質を研究し、もっとも獲物を捕まえられるであろう良いタイミングを見計らって鷹を空に放つということである。つまり、鷹匠は普段から膨大なエネルギーを使って、鷹の獲物獲得のため、あるいは見物人のための舞台を演出するために時間を生きているわけだ。句の「吹雪」も、そうやって演出された鷹なのであり、見ている人には実に格好がよろしく写るのである。鷹匠が生きがいを感じる一瞬を放鷹のような素早さで、しかも「『吹雪』よ、頑張れ」という愛情を込めて捉えた作品だ。(清水哲男)




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