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1997ソスN10ソスソス27ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

October 27101997

 萩のほかの六草の名の重たけれ

                           加藤鎮司

の七草のうちで萩以外の名前は重たいというのだが、どうだろうか。「そんなことはない」だとか「やっぱりそう思う」だとかと話題になったら、この句の勝利だ。七草を読んだ句は少なく、なかなかよいものがない。それはそうだろう。七種類もの花々をひとつのイメージとして提出するなんて至難の技である。句会でこんな題が出たら往生しそうだ。そこで作者のように裏技を使うことになる。似たようなコンセプトでは、鈴木真砂女に「秋七草嫌ひな花は一つもなし」がある。なアるほど……。ちなみに秋の七草は『万葉集』の山上憶良の歌「秋の野に咲きたる花を指(および)折りかき数ふれば七種(ななくさ)の花」「萩の花尾花葛花瞿麥(なでしこ)の花女郎花また藤袴朝貌の花」に由来している。このなかの「朝貌」は桔梗(ききょう)とするのが定説である。(清水哲男)


October 26101997

 けふ貼りし障子に近く墨を摺る

                           山口波津女

子を張りかえると、部屋の中が明るくなって新鮮な気分になる。その新鮮な気分で、作者はこれから物を書こうとして墨を摺(す)っている。ぴいんと張り詰めた気持ちのなかにも、どこか安らぎが感じられる句だ。障子貼りはあれでなかなか大変で、襖貼りほどではないにしても、けっこう神経の疲れる労働だ。子供の頃にはよく貼らされたものだが、不器用なので失敗ばかりしていた。我が家もそうだが、いまでは障子のない家庭も多い。子供たちは障子紙も知らないし、ましてや紙は障子の下方から貼っていくなどというテクニックも知らない。知らなくても不都合はないが、こうした句を味わえない不都合はある。白石三郎に「話しつつ妻隠れゆく障子貼」の一句。こんな日常茶飯事も、都会ではもはや懐しい光景となりつつある。(清水哲男)


October 25101997

 秋鯖や上司罵るために酔ふ

                           草間時彦

鯖は嫁に食わすな。それほどに秋の鯖は脂がのってうまいというわけだが、作者は出てきた秋鯖をそっちのけにして、酒に集中している。上司への日頃の不満が積もり積もって、一言なかるべからずの勢い。いくら美味だといっても、今夜は鯖なんぞを呑気に味わっている心の余裕などはないのだ。会社は選べるとしても、上司は選べない。サラリーマンに共通する哀感を、庶民の魚である鯖を引き合いに出して披瀝しているところが、この句のミソだろう。句の鯖は味噌煮でなければならない。(清水哲男)




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