1997ソスN2ソスソス22ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

February 2221997

 トンネルを出るたびに溪春浅し

                           八木林之助

この鉄道だろうか。トンネルを出るたびに、パッと視界は明るくなるが、その明るさのなかにある溪谷には雪が残っており、まだ春色は出そろってはいない。これでは、旅先の寒さが思いやられるというものだ。誰もが一度は体験したような懐しい光景。それをスナップ写真的にではなく、動きのあるムービー的にとらえたところが、作者の腕のよさである。こんな句を読むと、どこか遠くへ行ってみたくなりませんか。「溪」は「たに」。(清水哲男)


February 2121997

 胸にさす鉛筆日脚伸びにけり

                           斎藤優二郎

来「日脚(ひあし)伸ぶ」は冬の季語。冬至過ぎの少しずつ日脚が伸びていく状態を言う。だが「伸びにけり」となれば、早春と考えたほうがよいだろう。真冬に比べると、このごろはずいぶんと日没が遅くなってきた。作者は戸外で仕事をしているのだろうか。あるいは吟行の夕暮れ時かもしれない。いずれにしても、本格的な春の訪れの予感のなかで、作者の胸の内は明るくなっている。胸ポケットにさした鉛筆も明るい色だ。平凡な句のようでいて、そうではない。鋭い。「俳句研究年鑑'95」所載。(清水哲男)


February 2021997

 沈丁や風塵つねの多摩郡

                           有働 亨

摩郡は「たまごおり」と読ませて、すなわち東京の西部地域を指している。関東ローム層と呼ばれる赤土で有名な地帯だ。春先になると、この赤土が強い風でいっせいに舞い上がり、まさに風塵。目があけていられないほどのときも、しばしば。そんななかでの沈丁花だ。いまひとつ風雅には遠い感じである。……という時代も、実は昔のことで、畑や自然の道路が極度に少なくなってきた昨今、さすがの関東ローム層も暴れる余地はなくなってしまった。(清水哲男)




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