1997ソスN2ソスソス20ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

February 2021997

 沈丁や風塵つねの多摩郡

                           有働 亨

摩郡は「たまごおり」と読ませて、すなわち東京の西部地域を指している。関東ローム層と呼ばれる赤土で有名な地帯だ。春先になると、この赤土が強い風でいっせいに舞い上がり、まさに風塵。目があけていられないほどのときも、しばしば。そんななかでの沈丁花だ。いまひとつ風雅には遠い感じである。……という時代も、実は昔のことで、畑や自然の道路が極度に少なくなってきた昨今、さすがの関東ローム層も暴れる余地はなくなってしまった。(清水哲男)


February 1921997

 メロンパン体内すこし朧なり

                           奥坂まや

の句を、どうかメロンパンのように味わっていただきたい。というのも、以前、俳句雑誌ではじめて読んだときには、ひどく気に入った。友人たちにも、ずいぶんと吹聴してまわった。身体的に表現された抒情が、とても素晴らしいと感じられたからである。ところが、しばらくするうちに、一時的にだが、つまらなくも思われてきた。しょせんは、机上で考えた句じゃないか、小賢しい句だなどと……。しかし、またいつしか、やはりこの句は素敵だなと思い直したり、あっちへ行ったりこっちへ来たりと、私にとっては面倒な作品となってしまった。うーむ。「朧」は「おぼろ」。『列柱』所収。(清水哲男)

ロンパンの好きなひとにはすぐわかる。あのパンの衣をめくって見れば、ほら、ほのかに春の衣の朧ろなような明りが射して、あたかも胎内にいるよう……。朧をこのように見事に表現した例はない。メロンパンの句の傑作であろう。パンはパンでもあんパンなら三好達治に「あんぱんの葡萄の臍や春惜しむ 」があり、こちらもあんパン句の傑作であろう。奥坂さんはこの句集により俳人協会新人賞を受賞。一躍若手俳人のスターとなった。『列柱』所収。(井川博年)


February 1821997

 弟は漫画が好きで春の風邪

                           田野岡清子

いですね、こういう姉と弟との関係は……。熱があるのだからおとなしく寝ていればよいものを、いつの間にか起き上がって漫画本に見入っている弟。「しょうがないわねえ」と苦笑する姉。風邪は風邪でも、春の風邪はどこか陽性である。もっとも、いま流行のインフルエンザだと、熱が高すぎて漫画どころではないけれど。なお、俳句では「風邪」の表記だけだと季節は冬になる。(清水哲男)




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