1997ソスN2ソスソス15ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

February 1521997

 あの木ですアメリカ牡丹雪協会

                           坪内稔典

典句の傑作は数あれど、私なりのランキングでは、ベスト・スリーに入っている。意味不明なれども、一句が喚起する物語性が心地よい。一度も体験したことがない「懐しさ」。妙な言い方になるけれど、そんな雰囲気が伝わってきませんか。実は、今日この句を掲出するにあたって原典にあたりたかったのだが、句集が室内で行方不明。記憶のみに頼った引用となった。表記が間違っていない自信はあるのですが、ひょっとして……の場合、後日訂正します。(清水哲男)


February 1421997

 薄曇る水動かずよ芹の中

                           芥川龍之介

かにも龍之介らしい鋭い着眼。この句は、芹を詠んでいるようでいて、詠んではいない。芹という清澄な植物に囲まれた水のよどみを詠むことによって、おのが心の屈折した水模様を描き出している。ただし「上手な句」ではあるけれども、芹(自然)とともに生きている感覚はない。同じ「芹の中」を詠んだ作品でも、蕪村の「これきりに径尽きたり芹の中」の圧倒的な自然感からは、遠く隔たっている。まったくもって「うめえもんだ」けれど、どこかで読者を拒んでいる雰囲気を感じるのは、私だけであろうか。(清水哲男)


February 1321997

 地下街の日暮混み合ふ青目刺

                           神崎 忠

刺は、冬場から早春にかけてが旬(しゅん)。たまさかぶらつく食料品売り場は、見飽きない。句のように、季節を感じさせてくれる魚や野菜と出会ったりするからだ。もうひとつ、晩飯のおかずを考える立場にない気楽さもある。主婦に言わせれば「いい気なもの」でしかないというわけだ。でも、楽しいものは楽しい。余談だが、詩人仲間とよく行く新宿の酒場に、まことに美味な真鰯の目刺を食べさせる店がある。ああいうものは、たぶん地下街の売り場などでは手に入らないのではなかろうか。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます