1996ソスN12ソスソス7ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

December 07121996

 辞表預り冬の銀座の人混みを

                           杉本 寛

れぞ人事句。この、一年でいちばん寂しい季節に、辞表を出した人の気持ちも切ないだろうが、受け取った側にもやはり切ない思いがわいてくる。辞表を鞄の中に収めたまま、さてどうしたものかと思案しながら、華やかな銀座通りを歩いていく。大勢の通行人。きらびやかなショー・ウインドウ。擦れ違う多くの人が「懐にボーナスはあり銀座あり」(榊原秋耳)などと大平楽に、つまりまことに羨ましく見えてしまうのでもある。(清水哲男)


December 06121996

 雉子鳴いて冬はしづかに軽井沢

                           野見山朱鳥

でもないような句ですが、そこがいいですね。避暑地の冬です。夏場の混雑と対比させるために、あえて「しづか」と言ったところが利いています。冬の軽井沢を、私はもちろん知りませんが、この句のとおりなのでしょう。風景は寒々としていても、読者をホッとさせてくれます。さすがはプロの腕前だと思いました。アマチュアには、できそうでできない作品のサンプルといってもよいのではないでしょうか。『荊冠』所収。(清水哲男)


December 05121996

 たしかに四個霧夜武器売る会議の灯

                           五十嵐研三

の句は、金子兜太『現代俳句鑑賞』(飯塚書店)で知った。なにやらスパイ小説めいた雰囲気のある作品で、俳句にしては珍しい題材をよんでいる。同書での兜太の弁。「詩の場合、とくに韻文で書く場合はなにかの感じを伝えればいいわけだね。それにリアリティがあればいいんだ。この句にはリアリティがあると思う。現実感がね、不気味さに、嫌らしさに。その中心は『たしかに四個』だ。……」。ちょっとした現実の光景を想像力で変形した作品といえるが、たしかに私にも奇妙なリアリティが感じられる。「これが俳句か」ということになると、たぶん議論は大きく別れるだろうけれど。(清水哲男)




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