August 041996
炎天より僧ひとり乗り岐阜羽島
森 澄雄
この僧はもちろん禅僧であろう。黒の僧服と涼しげな青い頭。乗り物はもちろん新幹線の「こだま」。取り合わせの意表を突いた面白さが、発表当時評判となった。(井川博年)
August 031996
蚰蜒といふ字は覚えおく気なし
北野平八
蚰蜒を、さて何と読むか。原句には振り仮名がついている。そりゃ、そうだ。漢字コンクールのトップクラスでも、読めるかどうか。答えは「げじげじ」。字も覚えたくないが、本体ともあまりお近づきにはなりたくない。夏の嫌われ者でも有名虫(?)だけあって、昔からけっこう蚰蜒の句は多い。「蚰蜒に寝に戻りたる灯をともす」(中村草田男)「げじげじや風雨の夜の白襖」(日野草城)など。『北野平八句集』所収。(清水哲男)
August 021996
蜩といふ名の裏山をいつも持つ
安東次男
川崎洋氏によれば、ヒグラシのことを「日暮れ惜しみ」と呼ぶ地方もあるそうだ。命名の妙。若き日、詩集『六月のみどりの夜は』を読んだ。裏山ではいつも蜩(ひぐらし)が鳴いていた。私の中にもあったはずの裏山。今何処。『裏山』所収。(八木幹夫)
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