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July 0871996

 草を打つ雨を遍路のゆきにけり

                           藤田あけ烏

国八十八カ所の霊場を巡礼するお遍路さんの季は春。しかしこの句では雨の季節でなければならない。バサバサと草を打つ激しい雨に、作者の高い精神性が感じられる。俳誌「草の花」(1996年4月号)所載。(井川博年)


December 31122008

 ただひとり風の音聞く大晦日

                           渥美 清

晦日とぞなりにけり。寅さん・・・・じゃなかった、渥美清の句でこの一年をしめくくりたい。渥美清がいくつかの句会に熱心に参加して、俳句を残していたことはよく知られている。彼は「芝居も暮らしも贅肉がない人」と言われた。残された俳句にも、もちろん贅肉は感じられない。人を笑わせ、人を喜ばせておいて、自分はひっそりとただひとり静かに風の音に耳をかたむけている、そんな図である。まだ売れなかった昔をふと回想しているのかもしれないが、この人は映画「男はつらいよ」で売れっ子になってからも、そのような心境であったものと思われる。しゃしゃり出ることはなかった。俳号は風天(フーテン)。掲出句は亡くなる二年足らず前の「たまご句会」で作った。彼の大晦日の句には「テレビ消しひとりだった大みそか」という、これまた淋しげな句もある。風天さんの代表句と言われているのは「お遍路が一列に行く虹の中」である。どこやら、「男はつらいよ」の一カットであるかのようでもある。『カラー版新日本大歳時記』春の巻に、虚子や多佳子らが詠んだお遍路の句と一緒に収められている。ところで、「男はつらいよ」シリーズは第48作「寅次郎紅の花」が最後になったけれども、山田洋次監督は第49作目に「寅次郎花へんろ」を撮る予定だったという。森英介著『風天 渥美清のうた』には、著者が苦労して集めた風天さんの二二〇句が収められている。さまざまな大晦日の過ごし方があろうけれど、今日は大晦日の風天句をしばし心に響かせてみたくなった。『風天 渥美清のうた』(2008)所載。(八木忠栄)




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