iroha 13

いろは 13



---------------------------------------------------------------第十三弾 目次
CONTENTS 13
■巻頭言 千葉毅
■駒場寮1998
■『6・28裁判』の報告
■『明渡し裁判』の報告
■電気・ガス・スチーム用蒸気の供給再開を求める仮処分申請の報告
■教育研究を柔軟に包みこむハビトゥスを駒場に
■お知らせ

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駒場寮経験をつなぐ討論紙	98/5/24	投稿歓迎

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編集/発行:    駒場寮存続を支援する会
連絡先:        目黒区駒場3-8-1東京大学駒場寮北9S
電話:          ***-***-****
                **-****-****(呼)
共同代表:      成瀬 豊        (95,99期寮委員長)
                千葉 毅        (110期寮委員長)
WEB版           http://www.longtail.co.jp/iroha/
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■巻頭言  千葉 毅


 この春に停年を迎えられた平野教授・平澤教授・杉浦教授の連名で、3月末に教養学部教授会メンバーに宛てて一通の手紙が郵送された。そこに描かれているものが〈寮〉と呼びうるか否かは意見が別れるだろうし、これまでの駒場寮とは異なるものだとしても、理念に共感を覚える方もいるに違いない。ともあれ、そこには近い将来の駒場キャンパスや学生生活の、一つの姿が示されている。
 卒業式、あるいは入学式の席で、学生を前に祝辞を述べる蓮實重彦学長の姿を新聞・テレビ等でご覧になった方もいることだろう。「財政スキャンダル」などにのみ限定されたものが東京大学卒業生の「愚行」とは思えないし、それゆえその「愚行」に加担してきたのも「一部の先輩たち」とは思えない。が、いっぽうで、「東大生的」であろうとする必要のないこと、「いわゆる東大生」という概念から遠ざかることへと誘う口ぶりには、それが学長自身の振る舞いに照らしたとき果たして矛盾しないものなのかという疑問を差し引いたあとでも、捨て難い魅力がある。目指す先にあるものに同意できるとは限らないが、変わるべきものとして東大が語られているのは確かだ。
 駒場寮の存続運動は、たびたび、ノスタルジーやエゴイズムという形容を伴って、変わろうとする東大の流れに逆らうものであると評される。あるいは、教養学部は「改革」を飲むことで生き延びたが、寮にはそのしたたかさがない、と。実際、寮存続を言う者側は、残るべき寮の姿をどれほど具体的に思い浮かべ差し出すことができたか。
 時間の経過や年齢ともに、考えや態度は堕落していくものであるとするならば、変わらなくていいことを見極め、それを保つことすら変わることであると考えたい。
 悟空を弄ぶ釈尊のような蓮實学長の下にある体制に、対抗しうるような思想形成が望まれる(共同代表・千葉毅)。


恒例の花見でアピールする寮委員長


■駒場寮 1998

キャンパス・プラザ(仮)学部・学生協議会。前回協議の延長上でキャンパス・プラザの運営形態の大枠が決まってしまいそうな模様。
3・19キャンパス・プラザ(仮)学部・学生協議会。自治会が学生による管理を求める案を出す。学部側は、予算がつかないこと、文部省が認めないことを理由に受け入れず。学部側は、学部と学生による「運営協議会」にすれば、その問題をクリアできると主張。
3・21寮委員長選挙投票。新寮委員長が信任される。
3・23駒場自治団体(1998年度オリエンテーション委員会・駒場寮委員会・教養学部学生自治会正副委員長・学生会館委員会議長)による共同声明が『東大新聞』3/23号に掲載される。学部当局が入学手続き時に寮のオリエンテーション(一号館での入寮募集活動)を妨害したことに抗議。
3・24本郷で学寮委員会交渉。本郷五寮が駒場寮問題に関して三鷹特別委以外の交渉窓口を求める要求書を提出。学寮委は要求書に駒場寮が連名していることを理由に受け取りを拒否。
3・25駒場寮問題の学内解決を求める「三教官」からの書簡が、駒場の教授会構成員全員に郵送される(関連記事あり)。
3・26寮委員会認可のコンパ実行委員会による、卒業生の追い出しコンパ。
3・28寮生有志によるフリー・トークのイベント。
 
4月
4・1三鷹特別委を中心とした教職員約30人が寮内に侵入。警告のビラまきと寮内の調査。
4・2駒場で新入生の2次手続き。寮に関する資料の配布と「話し合い解決を求める」署名集め。学部による妨害あり。4日まで。
4・5 寮前で恒例の大花見会。
4・8地裁で6・28事件の口頭弁論。被告側は出廷せず(関連記事あり)。大きな進展なし。
 弁護団が地裁に駒場寮の電気・ガス・スチーム用蒸気の復旧を求める仮処分命令申立書を提出(関連記事あり)。
4・13入学式。2年生授業開始。
 駒場キャンパスで寮生によるビラまき。「駒場寮問題の基礎知識」「駒場寮とは何か」などのテーマで情宣。以後、連日ビラまき行動。
 北寮0Sでカフェ再開。非営利で運営。寮生が運営に参加すること、寮生の交流の場になることが主な目的。
4・141年生授業開始。
 キャンパス・プラザ(仮)学部・学生協議会。学生側は、形式上「運営協議会」形態で折れ、実質的に学生管理とすることを議事録で学部に確認させればよいという線に後退させられつつある。
中旬頃寮オリエンテーション実行委員会発行のパンフ『愛して駒寮』、新入寮生に配布。
4・16寮へ学部当局による「警告」文書。立ち入り禁止、退去せよという内容。
 学部当局による文書「新入生の皆さんへ」が配布される。新入生に対し、寮建物を使用すれば法的不利益を被ること、入寮・クラスルーム募集といった勧誘に応じないようにと警告。
4・20三鷹特別委の小林寛道らを先頭に教官数名が昼休みに、北・中寮入り口を出入りする学生に警告のビラまき。月曜から金曜まで毎日続けられる。
4・28地裁で寮の「明渡し裁判」の口頭弁論(関連記事あり)。
 
4・29年度初め恒例の寮内外の大掃除。クラスルームの整備がなされた。寮生だけでなく寮利用者が大挙して参加。
 
5月
5・8キャンパス・プラザ(仮)学部・学生協議会。運営形態の大枠が決まる。運営規則上では、学部と学生で構成する「運営協議会」形態とする。実質的に学生管理とすることを議事録で確認。


■「6・28裁判」の報告


 昨年6月28日の教養学部当局による北寮裏口の取り壊し工事の際、学部が導入したガードマンから暴行を受けた4名(支援者を含む)が、永野三郎ら三教官と新帝国警備保障株式会社に対して損害賠償を求めた民事訴訟(「6・28裁判」)について報告します。 4月8日に東京地裁民事721号法廷において、第一回の口頭弁論が行われました。被告は全員欠席。こちらの提訴内容について、三教官側は「不知である(事件がおきたこと自体知らない)」と記載した答弁書を出してきました。全くふざけた話であります。裁判長が「暴行があったという事実は間違いなさそうなので、よくある簡単な(法律的にはそんなに難しくない)損害賠償のケースですね」と述べたのに対して、原告側代理人が「いえ、(直接暴力はふるっていない)教官の、暴行事件を起こしたガードマンに対する管理責任は議論になるでしょう」と述べると、「ああ、そこはね、うん」と答えて、法廷でのやり取りはほぼ終わりました。次回の弁論は5月27日午前10時、同じく民事721号法廷で、実質的な議論ができるよう30分時間を取って行うということに決まりました。
 今回の傍聴には寮生他、十名程が来てくれました。次回も多くの方の傍聴をお願いします。
 勝利するまで頑張りますので、皆さん応援よろしくお願いします。(編集部)


■『明渡し裁判』の報告


 寮自治会などが国から駒場寮建物の明渡しを求められている裁判、いわゆる「明渡し裁判」の口頭弁論が4月28日、東京地裁で開かれた。
 寮側は、加藤、藤田、中西、尾林弁護士の4名の代理人が出廷。国側は、永野・学部長特別補佐、小林・三鷹特別委委員長など、9名が出廷。四月の人事異動で、これまでと嘗務検事・裁判長が交代した。傍聴者は合計で30人強と、本訴が始まって以来最多。寮の情宣により学生だけで20人強おり、新入生が多数来ていたのは寮にとって大きな収穫だった。
 本紙で既報の通り、前回2月20日の口頭弁論では、大学が行った廃寮決定の効力(寮自治会の占有権原)が一つの争点になっていた。この問題について、冒頭、寮側代理人が提出書面を説明した。

寮側代理人 大学側は、寮問題を裁判に委ねることによって、大学の自治を放棄している。
 大学の自治は、歴史的には中世ヨーロッパに始まり、近代になって国家権力に対抗する制度として発展。日本でも、国家からの弾圧を経て、戦後、憲法で学問の自由が保障され、その結果として大学の自治も承認された。
 大学の自治は当初、教授会の自治のことであったが、60年代の世界的な学生の参加要求運動の盛り上がりにより、大学の管理運営への学生参加が実現していった。
 とりわけ東京大学では、69年の確認書で、学生の自治権と全構成員自治を認めているにもかかわらず、東大当局は本件でそのルールを破っている。寮自治会の同意を得ない廃寮決定、電気・ガスの強行停止など。本件がこれほど長期化しているのは、東大当局のそうした強権的手法に原因がある。
 本件は、本質的に大学の自治内で解決されるべきであり、司法審査の対象外の問題なのだ。東大当局は速やかに訴えを撤回し、学内での話し合い解決を模索するべきである。
 また、東大当局が行った廃寮決定は違法・無効である。寮の自治は、旧制一高以来の自治の慣行、確認書、大学からの委譲に基づいている。廃寮決定は寮自治会の合意を得ていない一方的決定なのだ。寮は学生が利用する主要な施設でもある。東大当局は確認書の原点に戻れ。
裁判官 いまのは骨子ですか?
寮側 大筋、寮の主張だ。
裁判官 では、原告は次回、反論してくれ。いまだ訴状が送達されていない者がいるので、送達の方法についてもなんらか講じたい。

 ここで、次回期日が、6月26日午後3時30分、同じ615号法廷に設定された。

寮側 一言言っておきたい。大学側は、寮生が大勢住んでいるにもかかわらず、電気・ガスを停止するという自力救済行為を行っている。その一方で本訴を提訴するというのは矛盾した態度だ。国および裁判所はこの問題を検討しろ。
裁判所 矛盾しているかどうかはわからないが、要望はうかがっておく。
国側代理人 (返答なし)。
裁判所 今日の書面の主張を見ながら、裁判所の方も審理の仕方を考える。

 以上、約15分で審理は終了した。この日は国側の提訴申し立てを受けて、寮側が自らの反論・主張の骨子を述べることに当てられた。弁論時間は短かったが、慎重な審理を求める寮側代理人の申し入れにより、通常よりは長く時間を取れた。次回は、国側が自らの主張の骨子を述べる予定。
 訴状の送達について。国側は相変わらず、十分な送達努力をせず、訴状は寮に送ればいいと突っ張っている。裁判所はこのまま裁判を進めるか、きちんと送達を行うか迷っているようだ。訴状が未送達なため分離された42名の裁判についても、3月20日の口頭弁論が延期になった後、次回期日がまだ指定されていない。(5月18日現在)
 この日は学生の傍聴者が多く、新入生に寮問題への関心が広がる希望が感じられた。口頭弁論の中で寮側代理人も主張していたように、大学を話し合い解決に戻らせるためには、寮・学生・支援者の強い運動が必須であろう。(編集部)


■電気・ガス・スチーム用蒸気の供給再開を求める仮処分申請の報告


 駒場寮への電気・ガス・スチーム用蒸気の供給は、96年4月に教養学部によって強行停止されて以来、そのままの状態が続いている。電気は旧寮食堂建物から引いてきてしのいでいるが、不安定であるし、ガスはボンベを購入して対応、スチームは止まったままである。学部による供給停止が違法な自力救済行為であるということは、本紙既報の通りである。
 4月8日に債権者である寮は、債務者である学部に対して電気・ガス・スチーム用蒸気の供給再開を求める仮処分命令申立書を地裁に提出した。寮側の主張は、次の通り。

  1. 現在まで大学は、駒場寮との合意に基づき、寮建物の占有管理権に付随するものとして、寮建物に対し電気・ガス・スチーム用蒸気を供給してきた。
  2. よって、大学による供給停止行為は、寮生の寮建物に対する占有管理権を侵害するものに他ならない。(被保全権利の主張)
  3. 電気・ガス・スチーム用蒸気が供給されないことによって、寮生は極めて不便な生活を強いられていること。(保全の必要性)
  4. 健康で文化的な最低限度の生活を保障するために、一刻も早く電気・ガス・スチーム用蒸気が供給される必要があること。

 同時に提出された陳述書で、寮生が不便な生活の実態を述べている。蛍光灯が暗いため視力が低下したこと、ワープロのデータが消えてしまったこと、こたつやホットプレートが使えないことなど。
 寮生が被った被害は明白かつ甚大なのだが、仮処分の審尋がすぐ開かれるという見込みはない模様である。寮・弁護団は、審尋開始に向けて申し立てを補強し、引き続き裁判所に訴えていく方針である。(編集部)


教育研究を柔軟に包みこむハビトゥスを駒場に



去る3月25日に、駒場寮問題の学内解決を求める三教官からの書簡が、教養学部の教授会構成員全員に郵送された。三教官とは、今年3月をもって教養学部を退官された杉浦克己・平澤シ令・平野健一郎の三教授である。三教授は昨年5月にも、寮問題の学内解決を求める提案を教養学部教授会に対して行っていた(本紙第9号で既報)。ただし、この旧提案は、寮機能の停止を提案の前提としており、学寮として駒場寮を存続させようという我々「支援する会」の立場とは、根本的な部分で相容れないものであった。今回の三教授の書簡では、寮機能の停止が前提とされておらず、部分的には受け入れ難い所もあるものの、注目すべき所も少なくない。三教授の書簡は、いったいどこに問題があり、どこに評価すべき点があるのか。詳細な検討を願う。(編集部)



 教育研究は、環境条件や人々の行動様式と切り離されて成り立つものではない。透明な世界の中で研究が行われ、その成果が学生に伝達されていくわけではなくて、知の探求を支えている好奇心は、人々の生き方から多大の影響を受けつつ、教育研究への関心や動機も、社会環境と共に変化していくものである。
 次の世代の教育研究の発展を願う上でも、学生の旺盛な探求心を涵養しうるよう教育環境を整備していく必要があろう。思考がその力を養われる生の営みの場としてのハビトゥスをキャンパスに形成することが、将来の本学のあり方にも大きな影響を及ぼすことになるであろう。

さしせまる教育改革の中で
 中学生がナイフで警官を襲った事件があった。この生徒の通う中学校長は、全校生徒に「一生で一番大事な進路を決める時期なので、動揺しないように」と呼びかけたという。その記事を読んだ高校生は、それは「今の社会が中高生に与える利己的で無慈悲な圧力」だといい、同じ学校の「友人」の起こした事件に対して、「ゆっくり、仲間みんなで悩む時間もくれない」と訴えている。
 昨今の状況に促迫されて教育改革は必至であろう。しかし、若者の行動様式が正確に理解されているわけではない。若者が心に懐く計り知れない深淵の危うさやその悲鳴をゆっくり聞く余裕を失ってしまい、管理を強化するのみでは改革の成功はおぼつかない。若者自身が悩みを共有しつつ、自らの問題として解決の道を見出そうとすることが、改革の大前提となる。

「道理教育」の必要性
 今日の日本社会の自己中心的な風潮には著しいものがある。ただ利己的に社会システムを利用していればよいという気風に満ちている。法を犯して自己利益を追求することすら稀ではない。私たちは、共に生を送る社会の当事者として、公的秩序の主体的担い手であることを再確認しなければならない。
 大蔵省などエリートのスキャンダルは本学も例外ではないことを示している。そして、「悪いことをしてはいけないという初歩的な教育」を怠ってきたのではないかという批判もなされるようになってきた。立花隆は、欠如していたのは「道理教育」だったという。これは、知識の教育の強化だけでは済まない。思考にその力を与える生の営みの場としてのキャンパス空間全体の問題としなければならない。

多様性を育てる教育実験
 本学を、知の切り売りをするサービス施設にしてはならない。たしかに、かつての修道院や僧院のような、特定の目的に全身全霊を捧げる学びの場にまで大学を高めることは実際にできないし、それが真に社会の中での学問の健全な発展に寄与するとも考えがたい。しかし、学生が、それぞれ孤立した生をおくり、ただ細切れの知識を教場で学んだり、大学の提供する諸々の便宜をサービスとして受け取るとしておいてよいとは思えない。
 初心者ではあっても、学生は学問の世界に身をおき、大学の構成員として、主体的に大学に参加する存在であるはずである。少なくとも、本学は、学生が諸々の可能性を自律的に選択しうるような教育実験に積極的に挑戦してみてはどうだろうか。

自律的な学生が育つ空間
 大雪の朝、学生たちが雪かきをした。学生が中心となって実施されるゼミナールもある。自治会を始め諸々の自治団体も健在である。駒場祭は、学生の自主的な参加と運営によって実現されている。
 学生の自治活動も、大学に対抗して学生の要求をとりまとめて運動する組織であると共に、それを通して大学のシステムに自主的に参加している側面もある。学生の自立性は、本学における教育を維持する上で、必須の要件である。
 私たちは、さらに一層学生に教育の場での大学への参加を拡大すべきであると思う。例えば、図書館や情報教育棟の夜間開館を可能にするために、学生・院生に貴重な図書や情報機器の管理を一部ゆだねることも一つの教育方法として有効であろう。あるいはまた、多くの関心を引きつける「有名人」を駒場キャンパスに招待して開催する定期的なイベントの実施を学生たちの自主性にゆだね、大学はそれを支援するということも構想してよい。CCCL計画などにより今後充実するハードを機能させるソフトともいえる学生の自主活動組織や学生・教官のネットワークを緊密にしていくべきではないかと考えている。しかも、それらを多様な教育実験の一環として試みるということも可能であろう。

駒場自治空間の伝統とリフォーム
 私たちは既存の自治活動の伝統を無視するつもりはない。これまで積み上げられてきたものを基礎として、今後の学生の自律的活動も活発に展開しうるであろう。しかし、学生諸君の自治活動は、現在その基礎が弱体である。より多くの学生の参加を確保するためには、伝統を尊重しつつ、新たな時代に合わせていくことも必要であろう。
 貧困学生や障害をもった学生のために平等な勉学の機会を保障する施設を用意する必要性は今日でも衰えているわけではない。しかし、「駒場寮」も、新たな自律的空間の創造に向けてリフォームする可能性を考慮してもよいではないか。学内に宿泊施設があれば、クラス、文化・運動サークルを含む諸々の自主活動の可能性はたしかに一挙に開かれよう。こうした活動を支える学生の自律的組織化も、本学の教育研究を包みこむ柔らかいハビトゥスの形成として、多様な教育実験の拡張と解釈することも可能である。こうした条件が整ってくるとき、学生相互に悩みを打ち明けあい、悩んでいる人の相談に乗って、助けていくことも容易になるであろう。知の探求と人格の形成における対話と相互交流のための自生的空間の重要性を切に訴えたい。
 自治活動の伝統から最善のものを抽出し、新たな変革につなげていくことは、自治活動の再構築にもなるし、慎重に配慮すれば新たな教育実験のうちに生かすこともできるであろう。

リフォームは自分たちの手で
 新たな教育実験、自律的空間の創出が、公的な必要性を有しているものであるとはいえ、それを実現する資金を国家財政に依存すればよいということにはならない。むしろ、大学の側面的な支援を必須の要件としつつ、基本的な点では、ことの性質上、ここでもボランティア精神に則って進めていくべきであろう。自主的募金活動の必要性がある。しかも、継続性を支えるためには、一高同窓会に準ずる駒場同窓会のような組織が考慮されてもよい。
 当然、私たちも新たな教育実験、自律的空間の創出に向けて募金活動のための努力を惜しまないことを表明する。

 以上が、昨年5月の教授会に「駒場寮問題を解決するために」4つの条件にもとづく話し合いを提案して以来、私たち3人が模索を続けてきた解決案の基本的性格である。それを、私たちが本学を去る前にまとめてみた。約10カ月が経過する間に学部による「廃寮」が裁判手続きを含めて実質化の度を深めた現実は無視することができなかった。新たな話し合いによる解決の試みを求めるとしても、廃寮是非論の決着を話し合いの出発条件にするならば、話し合いは始まらないであろう。これが私たちの状況判断であった。この状況判断にもとづき、「駒場寮」をめぐる諸々の関連事項を包括的に取り上げて、将来構想を追求する前向きの話し合いを実現するためには、問題を大きく捉え、再構成していくことが必要であると考えたのである。

   平成10年3月16日

               国際社会科学専攻   杉浦 克己
               広域科学専攻     平澤 シ令
               国際社会科学専攻   平野健一郎



■お知らせ………………………………………………………………………………………

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