虎



虎。それは夜の深い森に
燃え輝くシンメトリ。
この恐怖のかたちをあえて作った
不死の手、不死の眼はいかなる存在なのか?

虎の眼が焼き焦がした深さ
空の高さはどこまで果てしないのか?
神はどんな翼で天にかけ上がり
どんな手でその火をつかんできたのか?

力強い心臓を支えるのは
どんな肩、どんなわざなのか?
その心臓が鼓動を刻みだしたとき
四肢がかくも恐ろしく躍動するのはなぜなのか?

鋭い頭のかたちを鍛えたのは、どんな槌、どんな鎖
どんなかまどとどんな鉄床なのか?
恐ろしい形をあえてつかんだその手より
恐ろしいものはいったいあるのだろうか?

星々が輝く槍の雨を降らせ
涙で天をあふれさせたとき
神はそれを見て満足の笑みをもらしたのか?
この恐怖を作った神は本当に羊を作った神なのだろうか?

虎。それは夜の深い森に
燃え輝くシンメトリ。
この恐怖のかたちをあえて作った
不死の手、不死の眼はいかなる存在なのか?





|ホームページ||詩|
|目次||前頁(天使)||次頁(私のかわいい薔薇の木)|
PDFPDF版