見つかった女の子



ライカの二親は
目を泣きはらして、
夜通し深い谷を進んだ。
荒野は泣いていた。

歎きのあまり疲れはてやつれはて、
声は枯れはてた。
手に手をとって七日間、
二人は砂漠の道をたどった。

深い影のもとで、
七夜を過ごし夢を見た。
二人の娘は荒れ果てた砂漠で
おなかをすかせていた。

夢に現れた娘の幻は
道なき道をさまよい、
飢え、泣き、弱り、
あわれな声で叫んでいた。

女は身震いして
休まらぬままに起き上がった。
悲しみに疲れ果てた足では
もう一歩も先に進めなかった。

悲しみに震える女を
男は両腕で抱きかかえた。
ふと気が付くと
目の前に獅子が横たわっていた。

戻ろうとしてももう遅い。
重々しい鬣に気おされて
二人は地にひれ伏した。
獅子は餌食のにおいをかぎながら

二人のまわりを歩きまわった。
しかし獅子が二人の手をなめたとき
二人の恐怖はやわらいだ。
獅子はただ静かに立っていた。

二人は深い驚きに満たされて
獅子の目を見上げた。
金色に輝く精霊を
不思議な思いで眺めた。

獅子の頭には冠
肩には流れる
金の鬣。
二人の怖れは完全に消えた。

獅子は言った。私についてきなさい。
娘のために泣く必要はない。
ライカは私の宮殿の奥深くで
ぐっすり眠っている。

そして二人は
ビジョンが導くままに従った。
荒々しい虎に囲まれて
娘が眠っているのを見た。

彼らは今も
寂しい谷間に住んでいる。
狼の吠える声にも
獅子のうなる声にも恐れることなく。





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