道の両側に、 並木のように連なっている、 電燈のなかの、 一本の根元に、 小さな花束が、 くくりつけられている。 誰もが、 気が付かないふりをして、 通り過ぎていくが、 本当は、 ああ、 ここはそうなんだ、 と、 一瞬でも思っているのだ。 いずれ、 その花束にも、 取り換える人が、 いなくなる、 ときがくる。 誰もが、 忘れたふりをして、 通り過ぎていくが、 隣の電燈にも、 その隣の電燈にも、 かつては、 小さな花束が、 くくりつけられていたときが、 あったのだ。 人は、 どこでも生きていけるし、 どこでも死ねる。 誰もが、 気が付かないふりをして、 通り過ぎていくが、 境はなくなったのだ。 人を、 生の側につなぎとめておく力は、 もうどこにもない。


(C) Copyright, 2003 NAGAO, Takahiro
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