歌舞伎とは何か?



歌舞伎とは何かって言われても、 とても答えられるような立場じゃありませんが、 そうですねえ、 歌舞伎座の地下に木挽町広場っていうお土産コーナーがあって、 椅子もちょっと置いてあって休めるようになってるんですけど、 今日はたまたま開場の十時半よりもだいぶ前に着いちゃって、 その木挽町広場の椅子に座って時間を潰していたら、 まわりももちろんおんなじような人たちでしたけど、 斜向かいに座っていたおばちゃんたちが突然大きな声を出して 「梅ちゃん、梅ちゃーん」って言うんですよ。 ああ、常連さん同士、友だちとばったり会ったのかと思ったんですけど、 その梅ちゃんがなかなか気付いてくれないみたいで、 いつまでも「梅ちゃん、梅ちゃーん」て騒いでいるんですね。 気がついたら梅のかぶりものをつけたお嬢さんが寄ってきていて、 「私のことですか?」ってきいてるみたいなんですよ。 「そーよ、梅ちゃんて言ったらあんたしかいないでしょ、 なんかさあ、それ誰も立ち止まって食べてくれないようだからさあ、 私たちが食べてあげようかと思ってね、 ちょっとちょうだいよ、 あら、おいしいわねえ」 「種はとって、ゼリーでコーティングしてありまして…」 「あら、そうなのう。 ああおいしかった、ごちそうさま、またね」 という具合でまあ上機嫌だったんですけど、 たぶん、そういうお客さんを集めてやっているのが 歌舞伎 なんじゃないですかねえ。


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