ゆで卵


きみをゆでたら きみは赤くなって 恥をしのんで 鍋の底にうずくまっている きみのしわはのびて つるつる きみのくぼみは ふんわり光を帯びて きみの目は 白目をむいている きみとぼくの関係は 浅くてからだぬき のものだったから ぼくはきみのことを 惜しいとは思わない でも ゆであがったきみのことを きれいだとは思う きみを火からおろして 腹を裂いたら ゆで卵がいくつも いくつもでてきた 明日から毎朝 一つずつそれを食べて ぼくは飢えをいやすだろう


(C) Copyright, 1995 NAGAO, Takahiro
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