川の上の街



川の上にある街 Stratford-upon-Avon 川の上にある街という言葉がふっと思い浮かんだのは この街の名前を覚えたからなのだろう upon-AvonはRiver Avon沿いという意味 ほかのStratfordと区別するための形容詞だ 土地の人は形容詞抜きでStratfordと呼ぶ もちろん この街は 一五六四年四月二三日にWilliamが生まれ 一六一六年四月二三日にWilliamが死んだ街 有名な観光スポットである 私たちも まだ残されている四〇〇年前の生家を外から見て (街全体が落ち着いた雰囲気に保たれているが  さすがにその家は回りの家よりも色が古い) ぞろぞろと人の流れに従って歩き 彼が死んだ家 New Placeを外から眺めた そこからRoyal Shakespeare Theatreに抜ける道は急に人通りが少なくなり 明るい道も劇場の陰に入ってしまう しかしそれも束の間で 劇場の横を抜けると突然視界がぱっと広がる 芝生の広場に座った人々 木の下で大道芸を見ている人々 芸人のよく通る声とどっと噴き出す笑い声 その先には日の光に輝くRiver Avon レストランや売店になっている舟が並んで停泊していて 狭い川の向こう側にはまた同じように低い町並みが続く ああ なんてゆったりとした日曜日 Stratford-upon-Avonは 川を抱いている街だった


(C) Copyright, 1996 NAGAO, Takahiro
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