片根伊六
僕は、パルコ7Fの バックヤードにいた 換気用の小窓が 1つ穿たれていて 制御された街のネオンが 暗闇と調和していた 左耳の裏に、刺激を感じ始めた 肉眼では見えない 限りなく細い針だった じっとしていた 赤と青の暗闇が 冷たく 漂っていた 3本目が差し込まれたBooby Trap No. 24
Booby Trap No. 24
球体の中は ひんやりしていた 古代の生態系が 守られていた 呼吸を 最小限に押さえたのだが やはり 侵入してきた 肺が熱をもちはじめて 古代のウイルスに 侵されつつあったBooby Trap No. 24
光の柱は そのためにあるのかもしれなかった ハドリアヌスがしたように 僕も 柱の中に 立ってみた そして ハドリアヌスがしたように 裸になった 黄ばんだヘインズと 破れた501は きれいにたたんで 祭壇にのせた すり切れたアジダスは 柱の外に 揃えた 目を閉じると 白い暗闇に包まれた 方向感覚がなくなり 球体が 僕を中心にして まわり始めたBooby Trap No. 24
ハドリアヌスは ニッチに腰掛けていた 懐かしそうに 石の硬さを確かめていた 僕と彼と どっちの方が寂しいだろうか? 僕らは一言も喋らなかったが たしかに ふたりとも 球体の中にいた ※「球体」からの三篇は、パンテオンという、古代ローマ建築についての詩です。 ドーム屋根の頂点に穴が開けられていて、光が円柱のように差し込みます。 ※ハドリアヌスという人は、パンテオンを創らせた皇帝です。Booby Trap No. 24