Booby Trap 通信  No.8

禁忌と禁忌の侵犯に人間をみる
聖女たち――バタイユの遺稿から/著訳者・吉田裕/書肆山田/定価2000円(本体1942円)

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【目次】
●「聖ナル神」遺稿 ジョルジュ・バタイユ/吉田裕訳(「エロチシスムに関する逆説」の草稿・聖女・シャルロット・ダンジェルヴィル)
●淫蕩と言語と――「聖ナル神」をめぐって―― 吉田裕
歴史の「中心」をめぐって――友人への9通の手紙/私家版(残部僅少)/無料
(著者に直接注文してください。著者住所:〒168杉並区高井戸西2-7-29)
【近況】子供の誕生祝いに筑摩書房の「文学の森」1を1セット買った。子供には少し難しすぎたようで、まだ手を付けないが、親にとっては思いがけぬプレゼントになった。文学とは楽しく面白いものであったことを思い出し、自分はいたずらに頭をひねくりまわしていただけではないかと反省している。就寝前に、少量のアルコールを片手に一編を読むのが最近の楽しみである。

Pastiche/田中宏輔/花神社/定価2400円
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いくら あなたをひきよせようとしても
あなたは 水面に浮かぶ果実のように
わたしのほうには ちっとも戻ってはこなかったわ
むしろ かたをすかして 遠く
さらに遠くへと あなたは はなれていった

もいだのは わたし
水面になげつけたのも わたしだけれど
(〈水面に浮かぶ果実のように〉)
【プロフィール】1961年、京都生まれ。現在、同志社国際高校数学科講師。『Pastiche』(1993.5刊)は処女詩集。「ポパイ」94.2.10号47ページに顔写真とインタビューが載っています。同性愛を織り込んだ詩も書く。
(著者住所:〒606 京都市左京区下鴨西本町36-1-2A号)
【近況】またまた、恋人がいないいない状態に陥りました。う〜ん。でも、もうじき、Nくんがアメリカから戻ってきます。「きみは、ぼくのこと、裏切ったけど、ぼくはひとりで、ずっと、ずっと待っとんたんやで〜」とでも言って、くどき落とそうと思っております。

布村浩一
(著者住所:〒186国立市西2-1-12 松野荘101)【近刊予告】布村浩一詩集「ぼくのお城」/昧爽社

新刊!
『蚤の心臓』/関富士子/思潮社/定価2600円

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棚の下の暗がりをすばやく歩く者は
猿のような後ろ姿だが
首だけあおむけて
蜂をほおにとまらせたり
幹の蟻をこすり落としたり
蔓や葉は光の方へ伸びるが
房がながながと垂れるので
日暮らし膝でいざり歩く
下草に濡れてふるえながら
てのひらで房の重みをはかっている
房は熟して張りつめ
汁がその手にしたたるだけで発酵する
びしょぬれで飲みつづける毎日のあと
枯れ落ちようやく明るんだ棚の下で
酔いざめのくしゃみをする
(〈時をめぐる冒険〉より〈葡萄畑〉)
【プロフィール】1950年、福島県生まれ。双子座のB型。編集業。特技は早寝早起き。趣味は飼育。詩集『螺旋の周辺』(1977年)、『飼育記』(1991年絶版)。現住所〒351朝霞市泉水2-7-34-101
【近況】息子は1999年に地球が滅びると信じていて、16歳で死ぬのは残念だという。彼を生き延びさせてやりたい。

近刊!
長尾高弘詩集(タイトル未定)/昧爽社/価格未定

しばし手を休めて
彼らは思い出した
地面に手を突っこんで
地面を真二つに
引き裂こうとした時のことを
わずかにできた裂け目は
広がらず
逆に地面にしめつけられた手を
ようやっとの思いで
引き抜いたのであった
(〈平和〉より)
【プロフィール】1960年4月6日生。(住所:〒223横浜市都筑区東山田3-26-16)
【近況】よく古本屋に行って詩集やら詩論集やらを買います。ゾッキ本屋にも、色々流れてきています。以前と比べると、恐ろしく安い! 同じように古本屋を回っていた15年前は、品切本には定価よりも高い値札が付けられていたものですが、今は新本屋に行くのがばからしくなるほど何もかも安くなっています。外の一冊100円コーナーで詩集を大量に出していたある店のダンナは、詩集の束が10本ほどあるんだけど、回転しないので捨てていると言っていました。このようなところにも、最近の詩の世界の状況が現れているようです。今までは自分の詩集なぞ出していなかったもので、それらの本を無邪気にホクホクしながら買っていたのですが...

沢孝子
(住所:〒560豊中市東豊中町5-2-106-504山形方)

駿河昌樹
(住所:〒155世田谷区代田1-1-5 ホース115-205)

園下勘治
(連絡先:〒241横浜市旭区上白根1-12-13)

荒川みや子
【プロフィール】1948年6月生まれ。詩集『森の領分』『冬物語1983』。10年ぶりで、自分の時間がでてきた。朝、ベランダから入るややわらかな陽ざしを眺めて生きている。ホント生きているって思う。
(住所:〒150渋谷区恵比寿南2-5-1)

白蟻電車/清水鱗造/十一月舎/定価1500円(送料込み)
穢れを通して生きていることの意味を探るというのはかなり勇気の要ることだ。清水鱗造はいまそれを敢えてやろうとしている。――鈴木志郎康(帯文より)
蟻の文字がぎっしり詰まった丸まった新聞紙 が
ボッと発火する
吉凶吉凶吉凶…と燃える
家系を満たす甘い雪崩…と燃えている
凌辱するものは味方でも撃て…と燃える
菊が硫酸に浮いている
声がただれてくる
逆円錐の渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
百平方メートルの皮膚がいっせいに鳥肌立つ
(〈渦群〉より)
【近況】息子の大学入学祝いにパソコンを買った。これで我が家には3台のパソコンが納まったことになる。音楽が趣味なので DTM に使いたいと言っている。僕も Windows でのDTP ソフトで Booby Trap も含めいろいろ作っている。また3月31日に松岡俊克氏作曲の〈声・ピアノ・チェロの為の“線・線・線”〉(詩:堀亜夜子)を聴くために音楽の友ホールに出かけた。詩を理解している音楽(また日常の肉声を理解している音楽)にしばし浸った。
【近刊予告】清水鱗造長編詩『毒草――夏の旅』/昧爽社(著者に注文して下さい。著者住所:〒154世田谷区弦巻4-6-18)

近刊!
ゼノン、あなたは正しい/倉田良成/昧爽社/価格未定

中天に赤いクレーンが揚がり、空の奥から覗 く眼がある
水が撒かれて建物が解体する夏
しきりにたちのぼる翳のなかを
はげしく煮沸されている坂下の街にむかう
巨きな意思が透明な斧のように頭上に吊るされ
プールの歓声がきらびやかに破壊する八月の青
悲しみのように髪を濡らしながら
すあしの子供たちはふたたび未来のほうへ帰ってゆく(〈はるかな場所にむかって寝返りをうつ〉より)
(著者住所:〒222横浜市港北区富士塚2ー28ー16 第二幸和荘101)
【近況】この間、初めて歌舞伎を観ました。松竹が百周年を記念して打った興行で、演目は「仮名手本忠臣蔵」です。朝の十一時から夜九時までの通し狂言で、初めてにしてはかなりのボリュームでした。二等席だったので舞台はずいぶん遠かったのですが、同席した知人がヨット用の望遠鏡を持参していたので、役者の表情などしげしげと見ることができました。なかでも顔世役のシカンという女方の技量はずば抜けていて、これが歌舞伎を観る快楽かとしばし納得したものです。おばさんたちも伊達に来ちゃあいないという感じですが、それにしても(料金は別として)歌舞伎座のトイレ事情はなんとかならないのかと思う次第です。なお訂正。前号の私の作品で、一連目後ろから三行目「四つ角」とあるのは「三つ辻」の誤り。また、同三連目が二つに分かれているのは誤りで本来は一つのものでした。

【編集後記】5月下旬、増刊第1弾として田中宏輔作品集"presence/echolalia"を出す。増刊第2弾は今年中にも批評集を出す予定。

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