禁忌と禁忌の侵犯に人間をみる
聖女たち――バタイユの遺稿から/著訳者・吉田裕/書肆山田/定価 2000円(本体1942円)
【目次】
●「聖ナル神」遺稿 ジョルジュ・バタイユ/吉田裕訳
「エロチシスムに関する逆説」の草稿
聖女
シャルロット・ダンジェルヴィル
●淫蕩と言語と――「聖ナル神」をめぐって―― 吉田裕
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【近況】バタイユ・ノートは手探り状態深まる。どこかであたりをつかみたいもの。他方日本の作家について書きたい気持ちが高まりつつある。2月に引っ越しを予定。
希望はまだある。
希望回復作戦/辻仁成/集英社/定価1200円(本体1165円)
とにかく時代がまた始まった
生中継される戦争の時代
僕は缶切りを買いに
彼女と連れ立って
近くのコンビニエンスストアーに向かった
彼女は避妊具も買ってね
と囁いた
ああ、なんて政治的
(〈希望回復作戦〉より)
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Pastiche/田中宏輔/花神社/定価2400円(送料込み)
いくら あなたをひきよせようとしても
あなたは 水面に浮かぶ果実のように
わたしのほうには ちっとも戻ってはこなかったわ
むしろ かたをすかして 遠く
さらに遠くへと あなたは はなれていった
もいだのは わたし
水面になげつけたのも わたしだけれど
(〈水面に浮かぶ果実のように〉)
【初登場】1961年、京都生まれ。現在、同志社国際高校数学科講師。『Pastiche』(1993.5刊)は処女詩集。「ポパイ」2.10号47ページに顔写真とインタビューが載っています。同性愛を織り込んだ詩も書く。
(著者に注文して下さい。著者住所:〒606 京都市左京区下鴨西本町36-1-2A号)
飼育記/関富士子/あざみ書房/1500円
○詩を射る詩たち・背反の理と、異次元の世界を同時に描く詩法を発見した。――藤富保男(帯文より)
年ごろになってもいっこうに腰に肉がつかず、かえって肩から二の腕にかけて、男のようにきりりと筋肉が巻きついてくるようなので、硅の母は、もう魚獲りなどやめておしまいと叱った。しかし硅は答えずその朝も知らぬふりで出かけてしまった。
夕方家に戻ると、母は疑い深くにらんで、おまえはほんとに私の娘かと硅のシャツを引き上げ、左の腋の下をのぞくと、こどものころにできた腫れものの痕がなくなっていた。
その晩、硅の母は犬に餌をやっていないのを思い出し、冷飯に汁をかけて縁の下に差し入れると、犬が暗がりからはい出てすりよってきた。もしやと思い、前肢の左の付け根の毛をより分けてみると、ひとところだけ丸い腫れものの痕があったので、母は犬を抱きしめた。 (〈硅T〉)
【著者紹介】1950年生まれ。『螺旋の周辺』(1977年・監獄馬車刊・1000円)、『飼育記』(1991年・土井晩翠賞)。現在詩誌「gui」同人。
(著者に注文して下さい。上記の値段は送料込みです。飼育記―残部6冊、螺旋の周辺―たくさん。著者住所:〒351朝霞市泉水2-7-34-101)
【近況】星占いは当たるのだろうか。雑誌では1月は自己の内面を見つめよというお告げだったが、実際外出を要したのは葬式と仕事の打ち合わせの2日間だけで、自己の内面を見つめるしかなかったのである。
長尾高弘
【近況】15年ぶりに詩書を乱読しています。当時と比べ、今はさまざまな詩が面白く感じられます。しかし、手持ちの本が主なので読んでいるものが少し古すぎるかもしれない。書く方では、11号に掲載していただいたものが5年ぶり。感情的な詩を書きたい。それにしても、パソコン通信がきっかけで発表の場をいただいたことには感謝のみ。生業の方では、昨年末にプログラマ向けの訳書が5冊相次いで出版され、ほっとしています。
解剖図譜/築山登美夫/TEC/定価1600円(送料込み)
*
……その壁のいたるところから孔がひらき
べろべろと水がしみだしている
夜ごと見知らぬ愛人を抱きしめていると
彼女は透きとおり
しだいに骨ばかりになって
はりだした体をうす青く滲んだ絨毯に沈め
液化した髪をひろげてゆく
私はほとんど形骸化してしまった
洩れてくる唖の光をかぶって
どこへも転調できなかった体を
自壊した風景のなかにさらしている
逃げ去るかたちに手足は泳いで
もう何も想像することはできない
ただ覚醒の皮を何枚もはぎとる眠りがあり
眠りのなかに何枚もの壁があって……
(〈夢語り 三つの断片〉より、第一の断片)
【著者紹介】1949年10月生れ。詩集『海の砦』(82年/弓立社/1400円)、『解剖図譜』(89年/TEC/1600円)。
(著者に注文して下さい。著者住所:〒140 大田区北千束2-15-12-302)
【近況】[近況]今回は締切りまぎわになってひどい風邪をひいてしまい、「『棲家』について」やむなく休載。異変の多い冬です。最近つよく印象にのこったのは小山田二郎展(小田急美術館)。ひさしぶりに読んだラディカルな詩集、加藤健次『やなぎ腰のおとこ芸者』。(93/2)
白蟻電車/清水鱗造/十一月舎/定価1500円(送料込み)
穢れを通して生きていることの意味を探るというのはかなり勇気の要ることだ。清水鱗造はいまそれを敢えてやろうとしている。――鈴木志郎康(帯文より)
蟻の文字がぎっしり詰まった丸まった新聞紙が
ボッと発火する
吉凶吉凶吉凶…と燃える
家系を満たす甘い雪崩…と燃えている
凌辱するものは味方でも撃て…と燃える
菊が硫酸に浮いている
声がただれてくる
逆円錐の渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
百平方メートルの皮膚がいっせいに鳥肌立つ
(〈渦群〉より)
【近況】パソコンはまったく便利な文房具です。いろんな分野に好奇心の触手を伸ばそうと読書していますが、なかなか思うに任せずというところ。数年続けた時評文をパソコンを使って書物への中間的形態につくってみたいと思っています。処女詩集『点点とおちてゆく掌の絵』、残部あります(昧爽社/1200円送料込み)。ブービー・トラップ編集室名義の郵便振替口座をつくりました(表紙参照)。ご利用ください。近所のコンビニでコピーするのとオフセット印刷で経費が違わなくなる部数に達しましたので、今号より20年も付き合いのある清水タイプライター社に印刷を頼むことにしました。パソコンのおかげで今年もBooby Trapを隔月刊で出せそうです。
(著者に注文して下さい。著者住所:〒154世田谷区弦巻4-6-18)
布村浩一詩集/自家版/定価1000円(送料込み)
90年代の喩の行方を鮮烈に告げる!
二つの ぼたん
鳥をつかって漁をする
魚売り
おちていく ふたつの
火花
花火は明るくて
泳がない
沈んでいく音楽にのせて
オルガンの音楽にのせて
オルガンのおちていく弾き手
だいじょうぶ
まだ
稲は食べられる
おちていく 二つの
蚕
祭りのなかの
合図のように
とおく
村の呪文の
なかに
いる
駆けていく距離の
小さな軽い足
とおざかっていく
船の上の 息を吐く
兄妹
(〈二つの ぼたん〉)
(著者に注文して下さい。著者住所:〒186 国立市西1-10-3 浜田方)
近刊!
長編書き下ろし
倉田良成詩/〈金の枝のあいだから〉/私家版/予定頒価2300円(送料250円)/挿画・造本/三嶋典東
冬の透明な船着場が近づく
鬱蒼と火のからまる街に
示される*尉*じよう*の面の
無限にかさなりあってゆく明るみのはなびら
底光りする鏡から
むらがるユリカモメが抜け出して
部屋いっぱいに香り立つ
小松川の暗黒へ
きらめく夜の河へ
千年
金の屑を散り敷いてきた秋ごとに
ふりそそぐ恩寵の驟雨を狂気のように堪えてきた
末は
旅人の
肉眼
明るみのはなびらの
あふれるまぼろしのはなびらのなかで
(パート15〈河明かり〉より)
(著者に直接注文のほか、渋谷と池袋のパルコに置く予定です。著者住所:〒222横浜市港北区富士塚2-28-16第2幸和荘101)
【近況】本誌が出るのが2か月に1回と順調(?)になってきたので、いままでのんびりかまえていた芭蕉論がなかなかの負担となってきました。つれて生活のほうも健康なものにならざるをえません。まあ、よい傾向ではあるのでしょうけれど……。数年かけて「塵中風雅」は本にするつもりです。
パソコン通信で「Booby Trap」の一部が読めます!
◎Panix BBS
・所在地 東京
・ホスト mmm
・電話番号 03-5486-7056,03-5430-7062
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