その顔の口もとのところに邪悪な影をみる
それは僕が邪悪なところに侵入したことを
意味する
薄い青い部屋の布団のうえで
その影をみた
遠い鉄道線路のつづく布団のうえに
腕がか細く延びて
僕は青い霧に巻かれていた
そして青い特急列車がこちらに向かってくる
僕はその脇腹を見なかった
僕はその尻を見なかった
ただ薄い邪悪な影が僕の時計を塩酸のように覆った
電圧を下げた照明のなかに
その顔はある
邪悪な影のある顔
小さな旗が揺れている
それは国旗のようだった
そして蝿の飛ぶような音楽
そして僕はまた一瞬
邪悪な影を好んだのだった
ちらりとその目が僕を見た
その口もとの邪悪な影を
僕は忘れない
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