曇り空から聞こえてくる
くちゅくちゅくちゅくちゅくちゅじゅくじゅくじゅく
見上げるとくらくらする
雲のすぐ下あたりに浮かんでいる
小さな黒いなにか
あれは誰のたましいでもない
生きているヒバリだ
息もつかずにに鳴いている
ひいひいひいひいひいちっちちっちちっちぢぢぢぢぢぢぢぢぢ
(ヒバリの歌はけっこう複雑でながい小節があり、
口説かれているような気がするときもあります)
道のかたわらはハス池で
葉のあいだからウテナが何本も伸びて
わずかな風にも揺れている
まるで天国みたいな景色だけど
(啓示かなんかにうたれたいです)
ここは繁殖期の地上だ
どこかに巣がある
わたしの帽子と卵までの距離がヒバリにはわかる
ハスの葉形にひろがった縄張りの中で
わたしは警告されている
なにごとかを聞き分けようと耳を澄ます
真上の空の一点でホバリングして
恩寵のような声を降らせるもの
ここから出て行け
と言っているようなのだが
一歩も動けない
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