いつもの道を
車で大きく曲ったとき
兎が轢かれ
肉片が飛び散っていた
それが 猫でないと
見分けられるのは
毛が周囲と同じ枯れ草色をして
耳が路面に長く立っていたからだ
次の朝 同じ場所を走った時
血は黒味をおびて
兎とは別な生きものの
形となり
行き交う車輪に
歯型をつけていた
潰された影が
ウインドーガラスに張りついている
それから何日か経って
通ると 肉は鳥がついばんだのか
ほとんど残ってなく
兎の皮だけが
野山を走った夢をうつすように
ゆっくり跳ねる
長く路面に立っていた
耳は そこにはなく
降りる車のバックミラーに
するどく映っている
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