序詩



笛を吹いて下る谷
奏でるうたは歓びのうた
あれ、雲の上に一人の子。
笑いながらのおねだりは、

小羊のうたを吹いてみて。
おやすい御用とうれしく吹けば
ねえねえそのうたもう一度。
涙を流して聞いている。

楽しい笛は一休み
楽しいうたをうたってよ。
それでは楽しいうたをうたえば
涙を流して喜ぶ子。

そのうた本に書いといて、
みんなが読めるとうれしいな。
見れば子どもはもういない。
私は葦の茎をぬき

むらの筆をこしらえて
きれいな水にしみをつけ
楽しいうたを書き留めた。
みんなが楽しくなるといいな。






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 羊飼い



羊飼いのやさしい丘はなんてやさしいんだろう、
羊飼いはその丘を朝から晩まで歩き回る。
一日じゅう羊たちについて歩き
一日じゅう羊たちをほめたたえる。

だって小羊が無邪気にないている、
母親がやわらかい声でこたえている、
羊飼いはみんなをまもっている、
羊飼いがそばにいるから羊たちはしあわせ。






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 響きあう緑



日がのぼって
空はしあわせ
陽気な鐘が
春にようこそ
雲雀とつぐみ
森の鳥たちも
声を張り上げ
鐘にこたえる
響きあう緑に
子どもたちの遊ぶ姿

樫の木陰に座った
白髪のジョンじいさん
年寄り仲間に囲まれて
日頃の憂いも笑い飛ばす
遊ぶ子たちに目を細め
思わず口をそろえて言う
あれだ、あれこそが
子どもの頃の歓びだった
響きあう緑に
若いときの姿が見える

子どもたちの遊びも
疲れてきたらもう終わり
日がとっぷりと沈んだら
楽しいときももう終わり
おかあさんの膝のうえ
兄弟姉妹まあるくなって
巣にかえった小鳥のよう
みんなおやすみの時間
暗くなった丘に
子どもの姿はもう見えない






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 小羊



 小さな小羊、誰につくってもらったの?
 それが誰だか知ってるの?
小川のほとり、草のうえ
いのちと食べ物をくださって、
何より一番やわらかい
つやつや輝くすてきな服も、
谷じゅうみんなが笑いだす
優しい声もくださった!
 小さな小羊、誰につくってもらったの?
 それが誰だか知ってるの?

 小さな小羊、おしえてあげる
 小さな小羊、おしえてあげるよ
その人の名前はきみと同じ
自分のことを小羊と言ったんだ。
その人はやさしくておだやか
小さな子どもになったんだ。
ぼくは子ども、きみは小羊
その人の名前はぼくらと同じ
 小さな小羊、神さまは
 小さな小羊、祝福してる






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 小さな黒人の子ども



お母さんが南のジャングルで生んだ子だから
ぼくは黒人。おお、でもぼくの心は真っ白だ。
イギリスの子どもは天使のように真っ白。
だけどぼくは光をとられたように真っ黒だ。

まだ日があまりのぼらないうちに
お母さんが木の根元に座って教えてくれた。
ぼくをひざに乗せて、ぼくにキスして
東の空を指さしてこう言ったんだ。

のぼってくるお日様をごらんなさい。あそこには
神様がいらっしゃって、光と熱をくださってるの。
花も木も、動物も人間も、朝のやすらぎ、
昼の歓びを神様からいただいているのよ。

私たちがこの地上にいるのはほんのわずか、
それは愛の輝きに耐えることを覚えるためなの。
この黒いからだと日にやけた顔は、
雲のような森の木陰のようなものよ。

魂が輝きに耐えられるようになったら、
雲は消えて、神様のお声が聞こえるの。
大事な愛しい子どもたち、木陰から出ておいで、
小羊みたいに歓んで、私の金の天幕に集まりなさい。

お母さんはこう言ってぼくにキスしてくれたんだ。
だからぼくはイギリスの子どもにこう言うよ。
ぼくが黒い雲から、きみが白い雲から自由になって
大好きな小羊みたいに神様の天幕に集まったら、

御父のひざに喜んでよりかかれるようになるまで、
きみが熱に耐えられるようになるまで、日陰を作ってあげよう。
それからぼくは立ち上り、きみの銀色の髪をなでて
きみのようになる。そうしたらきみもぼくが気に入るさ。






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 花



明るい明るいすずめ
深い緑の葉のうらで
幸せの花一つ
矢のようなお前を見てる
私の胸のすぐそばに
小さな揺りかご見つけてよ

いとしいいとしいロビン
深い緑の葉のうらで
幸せの花一つ
お前の泣き声聞いている
私の胸のすぐそばに
いとしいいとしいロビン






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 煙突掃除の少年



ぼくがとても小さいときにお母さんは死んじゃって、
ぼくがそうじーそうじーそうじーそうじーって
やっと言えるようになったら、お父さんはぼくを売った。
だからぼくは煙突を掃除して、煤のなかで眠るんだ。

小羊の背のような巻き髪の小さなトム・デイカー、
髪の毛剃られて泣いていた。だからぼくは言ったんだ。
泣くなよ、トム、気にするな。その頭なら
煤だってきみの銀色の髪を汚せやしないさ。

それでトムも泣き止んだ。そしてその夜、
トムは寝ている間にこんな夢を見たのさ。
ディック、ジョー、ネッドにジャック、たくさんの掃除の子たち、
みんなそろって黒い棺桶に閉じ込められ、鍵も閉められた。

そこに輝く鍵を持った天使がやってきて、
鍵を開けて、みんなを外に出してくれたんだ。
跳ねて笑ってみんな緑の野原に駆け下りた。
川でからだを洗って日の光を浴びてぴかぴか、

煤袋を残して、はだかの白いからだで
雲のうえにのぼって、風のなかで遊びまわった。そして、
天使がトムに言ったんだ。いい子でいたら神様が
お父さんになってくださるよ。そしたら、いつも楽しいんだ。

そこでトムは目が覚めて、暗いうちにぼくたちは起きた。
煤袋とぶらしを手に持って、掃除の仕事に出かけたんだ。
その朝はとっても寒かったけど、トムは幸せそうであったかかった。
自分のつとめを果たしていれば、いじめなんか怖くないのさ。






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 迷子になった男の子



お父さん、いったいどこに行くの?
お願いだからそんなに速く歩かないで
お父さん、ぼくに声をかけて
かけてくれなきゃ、ぼくは迷子になっちゃう

夜は暗く、父親はどこにもいなかった。
子どもは涙でびしょ濡れ。
沼地は深く子は泣きやまない。
そしてすべては霧に覆われた。






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 見つかった男の子



先へ先へと漂う光に誘い出され
寂しい沼地で迷子になって泣いている子ども。
しかし、神様はいつも近くで見守っておられます。
白い光に包まれて父のように姿を現わされたのでした。

神様は、坊やにやさしく口づけすると、その手を引き、
心配のあまり真っ青になって、寂しい谷間を
くぐり抜けてきた母親のもとに導かれました。
泣かないで、坊や。もう大丈夫だよ






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 笑いのうた



緑の木々が声を出して笑い、
小川がえくぼを見せて走り抜けるとき、
風がぼくらの冗談に腹をかかえ
緑の丘がそのざわめきに笑いを返すとき、

原っぱが生き生きとした緑に笑顔を見せ
きりぎりすが明るい景色に笑うとき、
メアリーとスーザンとエミリーが
かわいい丸い口でハッハッヒーと歌うとき、

色鮮やかな鳥たちが、桜んぼとナッツを広げた
木陰のテーブルで笑い声を上げるとき、
みんなおいで、楽しくなろうよ、
いっしょにうたおう、ハッハッヒー。






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 揺りかごのうた



私のいとし子の頭のうえに、
影をつくれあまい夢。
やわらかな月の光をあびた、
気持ちよい小川のあまい夢。

やわらかく沈むあまい眠りよ、
まゆを編んでちいさな冠をつくれ。
おだやかなあまい眠りの天使よ、
私のしあわせな子のうえに浮かべ。

夜のあまいほほえみよ、
私の歓びのうえに浮かべ。
あまいほほえみ、母のほほえみは
長い長い夜をなぐさめる。

あまい寝言、小鳩のようなため息よ、
この子のまぶたから眠りを追い出すな。
あまい寝言よりもっとあまいほほえみは、
小鳩のような苦しみをなぐさめる。

眠れ眠れしあわせな子。
神が創られたものはみな眠りほほえんだ。
眠れ眠れしあわせな眠り、
お母さんの涙のしたで。

いとしい我が子、おまえの顔に、
神様の御姿が透けて見える。
いとしい我が子揺りかごのなかで、
神様は私のために泣いてくださった。

私のためにおまえのためにみんなのために、
幼な児だった神様は泣いてくださった。
おまえにはいつでも見える、
おまえにほほえみかける神様のお姿。

おまえにわたしにみんなに、
幼な児になられた方はほほえみかける。
幼な児のほほえみは神様のほほえみ。
天地をなぐさめやすらかに眠らせる。






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 神のすがた



慈悲、憐憫、平和、愛。あらゆる者は、
苦しみのうちにこれらを求めて祈り、
これら歓びの美徳に
感謝の気持ちを返す。

なぜなら、慈悲、憐憫、平和、愛は、
我らの父、神だから。
そして、慈悲、憐憫、平和、愛は、
神のいとし子、人間にほかならない。

なぜなら慈悲は人の心、
憐憫は人の顔、
愛は人の神聖なかたち、
平和は人の衣装。

だから苦しみのうちに祈る
あらゆる土地のあらゆる者は、
慈悲、憐憫、平和、愛
人の神聖なすがたに祈る。

相手が異教のトルコやユダヤであっても
人は人のすがたを愛さなければならない。
そこには慈悲、憐憫、愛が住み
神も住んでいるのだから。






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 昇天祭



昇天祭の日だった。親のない子どもたちは無邪気な顔を浄め
赤、青、緑の服を着て、二人ずつ手をつないで歩いていった
雪のように白い杖をついた銀色の髪の儀官が子どもたちを導き
テームズを流れる水のようにセントポールの大聖堂まで歩いていった

おお何とたくさんのロンドンの花ロンドンの子どもたち
仲間同士で固まってすわり、それぞれがそれぞれの光を放っていた
たくさんのざわめき、しかしそのときたくさんの小羊たち
数千の男の子女の子たちが汚れを知らない手を上げた

そして子どもたちは強い風のように天に向かって歌声を上げた
天上の人々の間をめぐって響き合う雷鳴のように
その下に座るのは、年老いた人々、貧者の賢い守護者たち
だからやさしい気持ちになって、門口から天使を追い払わないで






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 夜



日が西に沈んでいく、
宵の明星が輝いている、
鳥は巣に戻って鳴きやみ、
私は自分の巣を探さなければならない。
花のような月は、
静かな光に包まれて、
天上高い四阿に座り、
夜にほほえみかけている。

さようなら、群れなす羊を楽しませていた
緑の野、しあわせな茂みよ。
小羊たちが草を食んでいた野山を
光の天使たちは静かに進む。
天使たちは目に見えぬかたちで
ひとつひとつの花と芽に
眠っているものの胸に
やすみなく祝福と歓びを注ぐ。

鳥たちを暖かくつつむ
無防備な巣をのぞき、
獣たちの住む洞穴をもれなく訪れる。
それらのものが傷つかぬように。
眠ることができなくて
泣いているものがあれば、
そのまぶたに眠りを注ぎこみ、
寝床のかたわらに座って見守る。

狼や虎が獲物をもとめて吠えるときには
憐れみのあまり立ち止まり泣く。
彼らの渇きをいやす道を探し求め
羊に手を出さないように導く。
しかし彼らが激しく猛り狂うときには
思慮深き者、天使たちは
従順な魂をひとつひとつ受け取り、
新しい世に送り出す。

そこでは、獅子たちの赤く燃える目も
黄金の涙を流す。
弱いものを憐れんで吠え、
羊たちの群のなかを歩きまわって言う。
怒りは彼のおだやかさによって
病は彼の健やかさによって
この不死の世界から
追い払われた

そして穏やかに鳴く羊よ、
これからはお前のかたわらに横たわり、
お前の名で呼ばれる方のことを思い、
お前を見守って泣く。
命の川で洗い清められた
私のたてがみは、
永遠に黄金のように光り輝く。
お前たちを守り続ける限り。






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 春



笛を鳴らせ!
今は静か
鳥たちは
昼と夜を喜ばす
谷間の
ナイチンゲール
空のひばり
陽気に
楽しく楽しくようこそ春

小さな男の子
歓びでいっぱい
小さな女の子
とても愛らしい
鶏がときの声を上げる
だから君らも
陽気な声で
子どもたちのさざめき
楽しく楽しくようこそ春

小さな小羊
ぼくはここだよ
おいで、ぼくの
白い首をしゃぶって
きみのやわらかい毛に
さわらせて
きみのやわらかい顔に
キスさせて
楽しく楽しくようこそ春






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 乳母のうた



子どもたちの声が緑に響き
笑いが丘にあふれるときは
私の心は安らぎ
ほかのものもみな静か

日は沈んだ、夜露も浮かぶ
子どもたち帰っておいで
空に朝が顔を出すまで
遊ぶのをやめて戻っておいで

いやいやもっと遊ばせて
まだ明るいし寝れないよ
おまけに空には小鳥が飛んでいる
丘は羊たちでいっぱいさ

はいはいそれなら遊んでおいで
真っ暗になったら帰って寝ましょう
小さな子どもたちははねて叫んで笑い
丘じゅうがこだまをかえした。






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 幼い歓び



名前はない
だって生まれてまだ二日--
きみのことをどう呼ぼうか?
私はしあわせ
だから私は歓び
すてきな歓び きみのもとに

かわいい歓び
生まれて二日のすてきな歓び
きみのことを歓びと呼ぼう
きみは笑う
私は歌う
すてきな歓び きみのもとに






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 夢



夢は天使が守る私のベッドの上に
本当に影を織りなしたことがあった。
蟻が迷子になっていた。
そこはたぶん私が横になっていた野原だ。

何かの間違いで迷って一人
真っ暗な闇のなかに歩き疲れた姿。
幾重にももつれあった茎のうえで
悲嘆にくれる彼女の声が聞こえた。

おお、私の子どもたちよ! 泣いているのだろうか
父親のため息を聞いているのだろうか
私がいないかとおもてに出て
見つからずに戻って涙を流しているのだろうか

かわいそうになって私の目からも涙が落ちた。
しかし私は、近くに土蛍がきて
応えるのを見た。泣き叫んで
夜の番人を呼び出したのは誰かな。

黄金虫が巡回するとき
私は地面を照らすことになっている。
黄金虫の羽音についておいで。
小さな放浪者よ、家路を急ぎなさい






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 ひとの悲しみに



ほかの人が苦しんでいるのを見たら、
私も悲しまずにはいられない。
ほかの人が苦しんでいるのを見たら、
慰める方法を考えずにはいられない。

涙がこぼれ落ちるのを見たら、
同じ気持ちにならずにはいられない。
父が子の泣く姿を見たら、
悲しみで胸がいっぱいにならずにはいられない。

子どもが幼い恐怖にうめき苦しんているのに、
母親は黙ってそれを聞いていることができるだろうか。
いやいやそんなことはできはしない。
決してできるわけがない。

まして私たちみなに微笑みかけて下さる方が、
鷦鷯の小さな悲しみを聞き
小鳥たちの憂いや悩みを聞き
子どもたち哀れな様子を聞いたら、

巣のかたわらに座って
彼らの胸に憐れみの心を注いだり、
揺りかごのそばに座って
子どもたちとともに涙せずにいられようか。

私たちの涙をぬぐうために、
昼も夜も私たちを見守らずにいられようか。
いやいやそんなことはできはしない。
決してできるわけがない。

その方はあらゆるものに歓びを与え、
その方は小さな子どもになられる。
その方は嘆きの人となって、
その方は悲しみをともにする。

あなたがため息をついているのにあなたを創った方が、
ため息をつかないなどと考えてはならない。
あなたが涙を流しているのにあなたを創った方が、
涙を流さないなどと考えてはならない。

おお、神は私たちに歓びをくださる、
神は私たちの悩みを打ち砕く、
私たちの悩みが消え去るまで、
神は私たちの傍らで悲しみつづける。





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