August 0782016

 さようなら秋雲浮かべ麹町

                           清水哲男

日、立秋です。秋の始まるこの日、日曜の増俳もさようならとなりました。長い間、拙文をお読み頂き、ありがとうございました。さて、先週日曜の午後、清水さんにお電話しました。「この句は、麹町にあるFM東京のパーソナリティーをお辞めになった時の句ですか」「そうそう」「何年の何月ですか」「忘れたなあ」「1980年の半ばくらいまででしたよね」「うん」「何年続けられたんですか」「12年半」「朝の9時頃までの放送だったと思いますが、スタートは何時からでしたか」「7時から9時まで」「その頃は相当な早起きですよね」「4時に起きていた」「始発で出勤ですか」「家の近くはバスも通っていないんで、タクシーと契約してたんだ」「その頃は就寝も早かったでしょうね」「うん。9時とかね」「私は、坂本冬美さんがゲストだった放送のことをよく覚えているんですが」「坂本冬美は、アマチュアのコンクールに出ていた時から注目してたんだ。それに優勝して、まだ、新人の頃だね」「他に印象に残っているゲストはいますか」「うーん、、、マスゾエさんかなぁ。新進気鋭の国際政治学者で切れ味がよかったね」「あの時代としてはかなり右寄りの発言を堂々と喋っていましたね」「そうそう。政治のコメンテーターとして、番組のレギュラーだったんだ」「ところで、ラジオのパーソナリティーになられたきっかけは何だったんですか」「ラジオに原稿を書いていたんだけど、ディレクターから、書くより喋る方が手っ取り早いからやってみないかって言われてね」「では、この句に解説を加えるとすればいかがでしょう」「そのまま。自分のために作った句だよ」「もう一句教えて下さい。私の好きな句に〈ラーメンに星降る夜の高円寺〉があって、何人かでこの句を話題にした時、この句は秋か冬の句だろうねということに落ち着いたのですが、句集の配列では〈さらば夏の光よ男匙洗う〉の次にあるので、夏の句かなとも思うんですがいかがですか」「忘れた」「無季ということでいいですか」「うん。」「それでは最後に、今年の阪神タイガースについてどう思われますか」「過渡期だね。いろいろ動かしているんじゃないかな」「たしかに全球団の中で一番選手の入れ替えが激しいですよね」「金本がフロントから言われてるんじゃないの?」「昔のストーブリーグのフロントとは大違いですね」「フロントも若くなったんじゃないの?何年後かを見据えた長期の展望を持つようになったんじゃないかな」。学生時代、ラジオから聞いていた声を受話器で聞けたしあわせな通話でした。以下、恐縮ですが私事のお知らせをお許しください。10月15日(土)から11月18日(金)まで、ユジク阿佐ヶ谷という小さな映画館で、『映像歳時記 鳥居をくぐり抜けて風』(池田将監督)を公開します。私の企画・脚本・プロデュースです。増俳を執筆しているうちに、観る歳時記を作りたくなり、三年かけて完成しました。イギリス生まれの少女が、熊野に住んでいる祖父と神社を旅する映画で、南方熊楠が、鎮守の杜の中で見つけた粘菌類のはたらきについて考えています。映画を観た後に、俳句を投句してもらおうと思っています。それらをHPに掲載させていただきます。また、映画館内吟行句会も計画しています。映画を観て、俳句を作る。ユジク阿佐ヶ谷の館長には、30年間上映させてほしいとお願いしましたが、とりあえずひと月という事になっています。みなさんが、銭湯に通うようにこの映画にひたっていただければ、長期上映となり、ユジク阿佐ヶ谷を俳句仲間のサロンにすることも可能になります。これに関しては、館長さんの了承を得ていますので、どうかみなさん、お越しください。詳しくは、『映像歳時記 鳥居をくぐり抜けて風』をご覧下さい。最後に、俳句を読み、文章を書く機会を与えてくださった清水哲男さんに感謝申し上げます。さようなら。『匙洗う人』(1991)所収。(小笠原高志)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます