August 0582016

 田の母よぼくはじゃがいもを煮ています

                           清水哲男

母が農作業している。家族の生活を一身に引き受けている様を子が見ている。何か手助けをしたいのだが子に出来る事はそんなに多くない。母に言われたじゃがいもを煮る事が精一杯である。母さんぼくは一生懸命心を込めて煮ていますよ。男性には母を思慕する傾向があると聴く。父親が外で奮闘努力しても子の目に留まることが少ないのかも知れぬ。子が真近かで見る母の姿は究極の優しさに満ち、子は命ごと委ねて頼ってゆく。私世代の多くは戦禍を掻い潜って生き延びてきた。皆貧しかった。命の支えとなった母はそれこそ慈母観音の如きと思慕されるのであった。ゲーテが人生の最後に「もっと光を」と言ったとか。もしそんな時に小生だったら何と言うか、多分「お母さん」だろうな。『家族の俳句』(2003)所収。(藤嶋 務)




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