July 2972016

 飛ぶ鳥の腋平らなり朝曇

                           櫛原希伊子

日様の窓を開けると鳥が飛んでいる。翼をいっぱいに広げて飛んでいるので腋がぴんと平らに張られている。折しもの朝曇り、さして眩しくも無い空の色がしっくりと目に馴染む。来し方も平凡、行く末もそうありたいなどとふと思う。ワタシも随分遠くまで飛んできたものだが、思い残す事もさしてないなあ。などと清々しい気分で空を眺めている。今日も斯く安らかな命の一時を得て、お茶がことさら美味しい。他に<目にふれるものことごとく旱石><宇や宙や土用入りなる作法あり><のどぶえの湿りほどほど天の川>など。俳誌「百鳥」(2014年10月号)所載。(藤嶋 務)




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