July 2772016

 梅干しでにぎるか結ぶか麦のめし

                           永 六輔

常おにぎりは麦飯では作らないだろう。好みによって何かを多少混ぜたご飯をにぎることはあっても。だいいち麦飯はバラついてにぎりにくい。敢えて「麦のめし」を持ち出したのは、六輔の諧謔的精神のありようを語るもので、おもしろい。「おにぎり」と言い、「おむすび」とも言う。どう違うのか。諸説あって、敢えて言えば「神のかたち」(山のかたち)→三角の「おむすび」。「おにぎり」のかたちは自由とか……。そのなかみも梅干し、おかか、たらこ、鮭、佃煮昆布……など、いろいろある。掲出句はなかみを梅干しにするか否かで迷っているフシがあるし、にぎるか結ぶかで逡巡していて、むしろ可笑しくも愉快ではないか。六輔は今月7日に亡くなった。3年前の7月の東京やなぎ句会の兼題で、柳家小三治が掲出句を〈天〉に抜いた。ほかに二人が〈五客〉に抜くなど好評だったようだ。六輔の「とりどりの羅源氏物語」の句も評価が高かった。俳号は「六丁目」。その句会では六輔の発言は少なく、元気で参加していた加藤武も大西信行もその後亡くなったし、欠席していた入船亭扇橋や桂米朝も亡くなった。『友ありてこそ、五・七・五』(2013)所載。(八木忠栄)




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