July 0872016

 行くところある海猫の声眩しめる

                           上田貴美子

ならどの街でも見かけるが、海の近いところでは海猫を多く見掛けるようになる。今作者が歩いている街は行く先々に海猫の声が聞える。空に群れ飛ぶ鳥たちは一羽一羽姦しく鳴き騒いでいる。聴覚の声が視覚の眩しさに重なって海猫の存在感に圧倒される。そんな港町を作者は楽しんで歩いている。作者にとって還暦を二十年も越えて現の事象を楽しめる余裕の日々なのである。他に<人間を脱走途中祭笛><創刊号何れも薄し小鳥来る><暦還りして二十年桜餅>等々あり。「暦還り」(2016年)所収。(藤嶋 務)




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