July 0272016

 岩牡蠣ををろちのごとく一呑みに

                           武田禪次

ろち(大蛇)を大辞林で引くと、〔「お」は峯、「ろ」は接尾語、「ち」は霊力のあるものの意]大きな蛇。(後略)、とある。掲出句は一読して、大粒の岩牡蠣をちゅるりと口に入れた時の感覚がよみがえり、ああ食べたい、と思わせる。をろち、というやや大仰な表現が逆に、蛇という生き物の持つさまざまな感触を一掃しながら一呑み感だけを強調して比喩として楽しい。食べ物を句にする時、説明ではない言葉で詠み手を掴んで、美味しそう、と思わせるのは簡単なようで難しい。『留守詣』(2016)所収。(今井肖子)




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