June 2662016

 竹夫人背より胸の透けゐたり

                           田島徳子

月十八日。第125回余白句会の兼題は、「竹夫人(ちくふじん)」でした。「絶滅寸前のこの季語の例句を増やそう。」騒々子こと井川博年さんの声かけです。私は、竹夫人の実物を見たことがありません。写真で見ると、竹で編んだ抱き枕のようなもので、1mくらいでしょうか。出題の井川さんは、最近、整体院で見たそうで、そのままの写生句「マッサージ台にごろりと竹夫人」。昨今、冷房が整っているので、寝床から竹夫人は消えましたが、指圧の時には重宝されるようです。ところで、私の家に、うなぎを獲るための竹で編んだ細長いしかけがあります。いつか川に仕掛けて、天然のうなぎをさばいて食おうと数年前から用意しているのですが、いまだ未使用です。これを竹夫人に見立てて一週間ほど抱いて寝ましたが、名句は生まれませんでした。これを句会に持って行ったところ、土肥あき子さんが手にとり、なんだかベタベタする、と言って手を洗いに行きました。無理もありません。失礼致しました。実際の竹夫人にもそんな淫靡な湿っぽさがくっついているのではないかと思うのですが、掲句には、それを払拭する清涼感があります。竹夫人を使用する人と行為よりもまず、竹夫人そのものに即した描写をして、品を出しました。なお、「背」は「せな」と読ませています。句会では多くの讃辞を得て、堂々の「天」。田島さんの俳号は多薪(たまき)でしたが、次回からは稲狸(いなり)になるそうです。(小笠原高志)




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