June 1762016

 民芸品売りて軽鳧の子育てをり

                           前田倫子

鳧(カルガモ)は全国の水田、湖沼、川等で繁殖する留鳥である。冬には市街地の公園の池にもたくさんいる。顔は淡色で筋がありクチバシの先は橙色で足が橙赤色である。野生の鳥は警戒心が強いのが普通ではなかなか人間に懐つかない。しかし中には奇跡的に野鳥が人に懐いた例を耳にする。多くのケースでは雛に孵った時に人間を目にして懐いたという。観光地の民芸品を商う店の傍に池があり軽鳧が子を産んだ。店の主人はせっせと餌を与えたり鴉を追ったりして面倒をみている。ここでは人と野鳥が信頼関係でしかと結ばれている。無償の愛は通じるもんだと愚考する次第である。その他<翡翠の一閃したる神の滝><八月の忘れもの吊る海の家><薫風や全身で吹く大ラッパ>など。『翡翠』(2008)所収。(藤嶋 務)




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