June 0962016

 住み着いてから貧乏と知った猫

                           板垣孝志

の川柳ばかりを集めたアンソロジーの中の一句。猫と孫の俳句は犬も食わないと言われるが、愛情が勝ち過ぎてべろべろになってしまうからだろうか。それに俳句では季語と猫の兼ね合いが難しいが、川柳の猫は輪郭がはっきりしている。適度な距離感をもって猫が生き生きと動き回っている。可愛い写真やエッセイも楽しくお薦めの一冊である。さて掲句は朝日新聞で連載中の「吾輩は猫である」よろしく迷い込んで住み着いたものの自分のエサも危ういぐらい貧乏だと気づいた猫の感想だろうか。猫は冷静な観察者なのだ。飼い主べったりの犬とは違うドライさで飼い主も環境も分析しているのだろう。『ことばの国の猫たち』(2016)所収。(三宅やよい)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます