May 2852016

 松落葉吹きよせられて海女の墓

                           森 婆羅

読して、海女の墓、に得も言われぬ切なさのようなものを感じた。と同時に、どこまでも続く松林の落葉が一斉に海風に吹かれる音が聞こえてくる。落葉の中にひっそりと立つ苔むした墓はきっと海に向いているのだろう。初めて目にする作者の森婆羅を検索すると、明治十年香川県生まれの俳人であり、香川県には海女にまつわる伝説と共に、海女の墓、と呼ばれる五輪の墓石が遺されていると知った。写真を見ると木漏れ日の中、静かなたたずまいの古い墓石で、墓のある志度寺は四国八十八箇所霊場の第八十六番札所であるという。確かな目で観て作られた句は見知らぬ景をくっきりと立てる。「新歳時記 虚子編」(1951・三省堂)所載。(今井肖子)




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