May 2052016

 ほととぎす田の水は堰溢れつつ

                           中山世一

トトギスの仲間にはカッコウとかツツドリなどがいて、なかなか遠目には見分けがつきにくい。ただ鳴き声は「カッコーカッコー」とか「トウキョウトッキョキョカキョク」とか「ポポ・ポポ・ポポ」とかなり特徴が出て個性的である。九州以北に夏鳥として渡来し、枯枝や電線にとまり、翼を垂らし尾をあげてくり返して鳴くことが多い。また自分では巣を作らないで、オオヨシキリなどの他の鳥の巣に卵を産み込み雛を育てさせる。これを托卵(たくらん)といい、育てる鳥が仮親となる。気持ち良い風を渡らせて田には水が満々と張られて行く。堰を溢れた水は音を立てながら勢いよく走ってゆく。ほととぎすと言えば眼前は今まさに目には青葉の候、時ぞ今の様をなしている。その他<葭切の声飛び込んでくる三和土><崩れつつ白波走る端午かな><蛍光灯蛇の標本照しゐる>など、俳誌「百鳥」(2014年7月号)所載。(藤嶋 務)




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