May 1152016

 筍を隠す竹林ぶおと鳴る

                           八木幹夫

の季節はもう終わりだろうか。それにしても「筍が好き」という人はあっても、逆に「筍は嫌い」という人に出会ったことはない。タケノコ、もって瞑すべし。小生も御多分に洩れず、筍の時季にはわしわしと一年分を食べてしまう。ナマでよし、煮てよし、焼いてよし、である。掲出句は、まだ筍が土からアタマをのぞかせるか否かの時季の景であろう。(地上に出た筍を盗難されないように、枯葉や草で隠すケースも考えられるが、ここではそうは解釈しない。)湿った竹林のあちこちで、「これから地上に出るぞよ。用意はよいか。」と言って「ぶお」という音があがり始めているのであろう。筍の可愛いオタケビが聞こえてくるようだ。唐鍬を担いで、ものども竹林へ走れ!である。武満徹は「尺八の音は、竹林を吹き抜けてくる風の音である」という名言を残したが、筍も子どもなりに一丁前に「ぶお」と幼い声をあげているのだろう。今年も筍を買ったり頂いたりして、たっぷりご馳走さまでした。幹夫(俳号:山羊)には他に「野苺の闇まっすぐに我に来る」がある。89句を収めた手作りの山羊句集『海亀』(2016)所収。(八木忠栄)




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