May 0752016

 手を空にのばせば我も五月の木

                           飯田 晴

誦していたつもりだった掲出句だがいつのまにか、空に手をのばせば我も五月の木、と覚えていた、まことに申し訳ないと同時にあらためて自らの言語センスのなさを実感している。手を空に、だからこそ初夏の風を全身で受け止めながら立つ作者の、思い切り伸ばした指の先の先が空にふれようとしているのが見える。五月の空は澄みきっている日ばかりではないけれど、この句にあるのは空から木々へ渡り来る新緑の風だ。掲出句が生まれてから十年ほどの月日が流れていると思われるが、また新たな風を感じながら、その手を五月の空へ大きく伸ばしている作者であるに違いない。『たんぽぽ生活』(2010)所収。(今井肖子)




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