May 0352016

 萌えに萌ゆ八十八夜の大地かな

                           竹内正與

岡生まれゆえ、朝な夕なに茶畑を見て育った。山腹を幾本も横切る茶畑が摘み頃になると、まるで大きな若草色の芋虫がごろりと横たわっているように見える。掲句の「萌えに萌ゆ」は土地への讃歌であり、大気がいま、あらゆる若葉の生気に満ちていることを予感させる。今年の八十八夜は5月1日だったが、ふるさとではきっと八十八夜の茶摘みが行われていたことだろう。つやつやと輝く美しい茶の新芽がやわらかに摘み取られていくと、山はすっぽりと茶の芳香に包まれる。新茶を入れるときに漂う香りは茶山の大地が立てる香りでもある。『鰯雲』(2016)所収。(土肥あき子)




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