March 1232016

 卒業の前夜に流す涙かな

                           宮田珠子

わずはっとさせられた。明日は卒業式という夜、その胸に去来するものは何だったのだろう。卒業式の涙とは違う涙、多感な十代の姿がありありと感じられるのは、目の前の景がそのまま句となったからだろう。作者は当時四十代、涙をこぼしているのは作者の小学六年生のお嬢さんである。以前にも書いたことがあるが、作者の宮田珠子さんは二人のお嬢さんを残して平成二十五年の秋に五十歳で亡くなられた。〈雛にだけ話したきことあるらしく〉〈子供の日子供だらけてをりにけり〉〈裸子の気になつてゐる臍の穴〉など、独特の愛情あふれる目線で作られた吾子句はいずれも個性が光っている。句会報を整理していて掲出句を見つけたが、あらためてその早逝が惜しまれる。(今井肖子)




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