February 2322016

 孫引きの果てなき獺の祭かな

                           中澤城子

十二候の暦では2月19日の「雨水(うすい)」から3月5日の「啓蟄」までの間を3つに区切って、「獺祭魚」「鴻雁来」「草木萌動」としている。初候である「獺祭」は今日あたりまでをさす。歳時記で獺祭の項をひいたり、検索してみても、どれも同じようなことが書かれている。「獺(かわうそ)が自分のとった魚を並べること。人が物を供えて先祖を祭るのに似ているところからいう。」というのがそれ。とはいえ、1979年以来目撃例がなくおそらく絶滅したとされるニホンカワウソが身近にいない現在では、事実関係は確かめようがない。それでも「獺祭」という言葉は、有名な日本酒の名にもなっており、引用が孫引きであろうと、こちらは絶滅の危険はなさそうである。言葉だけが子々孫々と残る不思議さもまた、いたずら好きの獺に似つかわしいように思えてくる。〈芽柳のやさしく風を抱きにけり〉〈誰もゐぬことも幸せ小鳥来る〉『狐の手袋』(2015)所収。(土肥あき子)




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