February 0622016

 たわたわと薄氷に乗る鴨の脚

                           松村蒼石

の羽根は見れば見るほど複雑な色合いでそれぞれ微妙に違う。鴨の頭のあたりの暗い青緑色を「鴨の羽色」ということを最近知ったが、そんな体に比べて脚は皆一様に明るいオレンジ色で、陸に上がると体と微妙なバランスだ。たわたわ、という言葉はそんな鴨の脚の大きな水かきの質感を、生き生きというより生々しく感じさせるが、その生々しさでより一層薄い氷の下の水に光が満ちてきて、これは薄氷の句なのだとあらためて思う。それにしても、たわたわ、は字面もさることながらあ音を重ねて、声を出して読むと動きが見え音も聞こえて鴨らしい。『寒鶯抄』(1950)所収。(今井肖子)




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