February 0522016

 雑貨屋の空の鳥籠春浅し

                           利普苑るな

と昔前にはどこの町や村にも雑貨屋があった。母は「よろずやさん」と呼んでいたが、何でもちょいとした生活用品が手に入った。今で言うスーパーのルーツみたいなものである。そんな日常の雑貨屋の軒先に鳥籠が覗いている。籠の鳥は紫外線の強さとか空の青さにやって来た春を感じている。早や囀りの気配すら見せている。立春を迎えたばかりの空気は人間の肌にはまだまだ寒い。しかし時は確実に進行する。これから私の近くの利根川周辺では「ケーン、ケーン」と雉が叫び始める。他に<主われを愛すと歌ふ新樹かな><失せやすき男の指輪きりぎりす><卓上の鳥類図鑑暮遅し>などあり。『舵』(2014)所収。(藤嶋 務)




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