February 0422016

 立春の木を吐き魚を飲むからだ

                           山下つばさ

日は立春。白々と夜が明ける時刻もだんだんと早くなり、降り注ぐ光も一段と明るさをます。掲載句は不思議な句で一読したときから謎がとけない。このからだの主体はなんなのか。春になると木々も芽を出し、雪解け水に川も沼も水量も豊かに、冬のあいだ水底に沈んでじっとしていた魚も動き始める。この主体は季節の順行に変化する自然そのものかも。訪れた春に木を吐く大地。水の温度の変化を敏感に感じ取って動き始めた魚たちを迎え入れるたっぷりした海や川。謎は謎としてこの句に表された生き生きした自然の動きを自らのからだで感じつつ、今年の春を迎えたい。『俳コレ』(2011)所載。(三宅やよい)




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