January 3012016

 縁側におはじき一つ山眠る

                           日原正彦

の句にあるのは遠い記憶の中の穏やかな日差しだ。おはじきは深い海の色に小さく光っている。少しささくれ立った木の温もりを手のひらに感じながらの日向ぼっこは心地よく、見るともなく見ているのは遥かな山の静けさ。読み手の中にもそんな冬日和の景が浮かんでくる。なんとなく捨てないで持っていたおはじきを今、手のひらにひんやりとのせてみた。はじいて遊んだ記憶はさらに遠いが、縁側と共に懐かしい。同じ集中に〈水仙の彼方に光る副都心〉とある。どちらの句も近景と遠景を一句の中に組み合わせて巧みであり、冬日の持つやさしさと鋭さがそれぞれ描き分けられている。(2015)『てんてまり』所収。(今井肖子)




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