January 282016
冬うらら猫とおんなじものを食べ
寺田良治
阿倍青鞋の句に「水鳥の食はざるものをわれは食ふ」という句がある。空を飛んで遠くの国から渡りをする水鳥が食べるものは軽くて清い印象がある。その裏には肉をはじめあらゆるものを食べて生きている人間の猛々しさが隠されているのだろう。水鳥とおなじものを人が食するのであれば仙人のような気がするが、「猫とおんなじもの」は生活感が漂う。豪華ではなく、ささやかな食を猫と分け合って食べている様子とともに自分の食生活へのペーソスが感じられる。ごちそうや珍味と呼ばれるものに魅力も感じず、お前と同じもので十分だよと膝に乗せた飼いネコに話しかける。「猫まんま」はいいけど、キャットフードはいやだな。『こんせんと』(2015)所収。(三宅やよい)
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