January 1912016

 鮟鱇のややこしき骨挵りけり

                           山尾玉藻

篇に弄ぶと書く挵(せせ)るは、その字が表す通り、箸で食べ物をつつきまわすこと。決して行儀がよいことではないが、対象が鮟鱇であることにより、納得の一句となった。河豚にまさる美味と呼ばれる鮟鱇だが、グロテスクな見た目同様、その身もきれいな切り身となるわけではなく、どの部位もかなり複雑な形態をしている。骨にも皮にもゼラチン質の身をまとい、料亭によっては「骨についた身はすべてしゃぶって食べつくしてください」とまで言われるほど。ともあれ、ややこしくもおいしい鮟鱇にせっせと取り組んでいる姿は飾り気なく、鍋を囲むほっこりとあたたかい人間関係までが見えてくるのである。『人の香』(2015)所収。(土肥あき子)




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