January 0812016

 鷽替へてまた抽斗に放り込む

                           土肥あき子

替えとは、主に菅原道真を祭神とする神社において行われる神事である。鷽(ウソ)が嘘(うそ)に通じることから、前年にあった災厄・凶事などを嘘とし木彫りの鷽を新しいものに交換し、今年は吉となることを祈念して行われる。この鷽と言う鳥は四十雀ほどの小鳥でオスの頬の淡い朱色が美しく目を引く。「琴弾鳥」の別名は脚を交互に上げてフィッフィッと鳴く仕草が琴を弾くようなので着いた。梅や桜の蜜をあさり花びらをこぼすのもこの鳥の性。また春が来て今年こそはもっと良い夢を散らしたいなと新しい鷽を抽斗(ひきだし)に大切に仕舞う作者ではあった。他に<夜のぶらんこ都がひとつ足の下><花疲れして懐の猫が邪魔><じゃんけんのあひこは楽し木の実落つ>などなど『夜のぶらんこ』(2009)に所収。(藤嶋 務)




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