December 28122015

 老人はすぐ死ぬほっかり爆ぜる栗

                           坪内稔典

生観などというものは、それを考える者の年齢や体調によって変化する。夏くらいから調子をくずして、病院通いがつづいていた。ここに来て無罪放免とはいかないけれど、一応日常的には病院と縁が切れたのだけれど、最近は自分の死に方についてあれこれ考える機会が多くなってきた。そんななかで出会った一句だが、いまの私の死生観に近い心境が詠まれていると思った。ざっくばらんに言ってしまえば生きていることについて、「もうこの辺でいいや」という感覚が濃くなってきた。といって自暴自棄というのではなく、句にあるような一種なごやかな思いのうちに死んでいけそうという思いのなかで、人生上の納得が得られそうな気が得られそうだからだ。まこと人がおだやかに逝くとは、栗がほっかり爆ぜるように、やすらかな自爆を起こすからなのだろう。『ヤツとオレ』(2015)所収。(清水哲男)




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