December 26122015

 千の葉の国に住みつき大根食ぶ

                           鳥居三朗

葉という県名は、県庁所在地の千葉市の地名から名付けられたというが、千葉という地名そのものの由来は諸説ある。しかし、千の葉、と美しい言葉で表現されると、豊かな自然と土壌が思われてなるほどと思う。千葉県八千代市にお住いだった作者、千葉名産のピーナッツが好物と伺ったが、今日は大根を食べている。今が旬のこの野菜、生でも煮ても焼いてもおいしく、その生活感が日常の幸せを思わせる。都会過ぎないけれど便利で住みやすい八千代での暮しにしみじみと幸せを感じながら、よく煮えて味のしみた大根をおいしそうに食べている様子が思い浮かぶ。飾らず優しく自然体だった鳥居三朗さんだが、今年の九月、あっというまに旅立たれてしまわれた。思い出されるのは笑顔ばかり、心よりご冥福を祈りつつ今年最後の一句に。合掌。『てつぺんかけたか』(2015)所収。(今井肖子)




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